いいかげんタイトルくらい決めたほうがいい(異世界BL)

『???(タイトルすら決まってないよ/BL)』ぬいぐるみ/777練習

 討伐隊の解散後、酒場で昼間から仲間ギルドメンバーと一杯浴びて、帰路についたのは夕暮れ時。

 運命ってやつは、俺をひいきしてるに違いない。


「おかえり、リュシオ」


 偶然街中で出会った我が嫁、ルカはそれはそれは可愛い笑顔で駆け寄ってくれた。



 ルカと一緒に住むようになったのは、もう一年ほど前か。

 その前は、この大都市からは遠く離れた小さな田舎町で、妹と二人きりで過ごしていたそうだ。

 ルカの妹はたいそうな別嬪びじんで、ここ一番の商会のせがれの目に留まった。

 他に家族もいないルカは、妹の結婚とともにこの都市に移るため遠路はるばる旅をしていた。その途中で魔物に襲われ…いや、下手な追い込みしたのは俺の手落ちだが、当然助けた俺に惚れ込んだ訳だ。


 デカくて、ヒョロヒョロで、ニコニコした眼鏡の優男。妹が美人だから余計に目を向けられることはなかっただろうが。

 妹なんか目じゃないくらいルカは可愛い。二流のアタッカーでしかない俺を尊敬の眼差しで見てくるもんだから、俺は調子に乗って今じゃ一流を超えた。


 関係は、まぁただの同居人だ。でも、あいつは俺のこと好きなんだから、俺のモンだし嫁も同然。異論は認めん。



 そんなルカが、懐かしそうに両手でぬいぐるみを抱いた子供を眺めた。


「好きなのか」


「いや、妹が昔大事にしてたのに似てて」


 妹のために生きてきたルカに、自分の思い出はないのだろう。こいつはそれを当然だと思ってるお人よしだった。


 俺は子供が出てきた店へと迷わず入った。それから、窓辺に飾ってあった大きなクマを買って、ルカに手渡す。


「お前だって似合うじゃねーの」


 正直、そんなどころじゃない。ふわふわのぬいぐるみを両手で抱えたルカの可愛さがヤバい。昼夜眺めていたい。

 だけど、そんなこと言える訳ないだろ?


「……ありがとう。なんか、ふふ、嬉しい」


 ルカはくすぐったそうに笑った。

 クマ公に嫉妬心が掠めたが、そいつは俺の嫁だからな?

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