※この扉はBLを愛する人にしか開けません 注意!!
(ぬいぐるみ男子と着ぐるみオヤジ※この扉はBLを愛する人にしか開けません 癖詰め合わせVer.)可愛いものが好きってこんな意味じゃなかったのに?
確かに俺は、可愛いものが大好きだ。
190cm近くある骨太の身体に人相が悪い三白眼。喧嘩もろくろくしたことがないのに、歴戦歴賞の猛者をうたわれるほどの強面で、道を歩けば人が避ける。
そんな俺に可愛いものが似合わないのなんてわかってるんだ。
「うん、可愛いじゃないか」
だから、この状況が心底わからない。理解を超えすぎていて、真っ白になって固まるしかない。
なんで俺は、最推しのぬいぐるみであるペンギンのペーナのために、俺が作ったワンピースと同じものを着せられているのか。
そしてなんで、元祖ペーナともいえるペーナの着ぐるみの中のこの人が、それを満足そうに眺めているのか。
こんなハズじゃなかった!
だって、ペーナは俺が何年も見守り続けた最強に可愛いアイドルで。
うっかりペーナと同じ仕草をしてるオッサン、中の人である黒崎さんを可愛いってときめいたけど?
それから、ペーナの着ぐるみ姿で仕事中の俺に手を振ってくれたり、いろんなショップの可愛い限定品なんかを差し入れしてくれたり。そんな日が二か月も続けば、もう隠しようがないくらいにキュンもギュンも味わったけど?
ああそう。黒崎さん可愛いってもう正直に言っちゃいそうなとこまできてたんだ。
だけど、なんで、俺が可愛いって言われてるんだよ???それも、こんな無理がありすぎる格好で!!!
「に、似合うわけねーし」
昔は3人の姉たちと共に、一緒に可愛いものに囲まれて過ごせた。
だけど、気が付けば姉たちの顔は見下ろす場所にあって、話をするために膝をかがめるまでになっていた。
可愛いものの話をしようにも、相手が震えて逃げ出すほどにいかつくなった顔つき。
だから、可愛いものなんて諦めた。諦められない心だけをぬいぐるみの世界に追い込んで、可愛いぬいぐるみに可愛い格好をさせて心を満たしていた。
そう、それで満足する術を覚えていたんだ。
だって、俺には似合う訳がないって思い知ってるんだから。
ほんのりクリーム色のワンピースは、ふわりとした袖にバックリボン。随分と大きなサイズなのだろうが、胸の下の切り替え部は、細いウエストなんて持たない俺の脇腹で突っ張って、下手に動くと破れそうだった。
柔らかく層になったスカートが、身じろいだ足元でふんわり揺れた。
ああ、可愛い。可愛いけど。
自分がどんなに不格好なのか知っている。だから、恥ずかしくて、惨めで、仕方ない。
隠せないのがわかっていても、頭が沸騰しそうな恥ずかしさに、逃げるように片手で顔を覆った。何がなんだかわからない。混乱の境地に涙まで浮かんでくる。
横たわる俺を上から覗き込むように眺めた黒崎さんは、じろじろと遠慮なく俺の姿をじっくり見つめた。
「うーん、まあ、世間的には似合わないのかもしれないけどねぇ。俺は、大輝くん、ものすごく可愛いと思うなぁ。それに、……ちょっとばかりセクシーだね」
「っあ、……」
黒崎さんの手が、スカートを不格好な形にしている腰骨を柔らかく撫でた。その衝撃に零れた吐息は、自分でも信じられないくらい甘くて、可愛いぶっているように思えて、更に頭が真っ白になってもう一方の掌でも顔を覆った。
「ああもう、可愛いなぁ、大輝くん」
柔らかな笑いの音が耳を擽って、優しく熱量のある視線とともに降ってくる。
恥ずかしい。恥ずかしくて、どうにかなりそうなのに。
ドキドキ、ドキドキとうるさく鳴る心臓の奥が、可愛いと言われる度に喜んでいる。
もっと言って欲しい。もっと見て欲しい。もっと。もっと。
羞恥に焼ききれそうな頭の芯がぼーっとして、自分でも意味がわからないほどに興奮しつくしている身体を、統制もできずに受け入れている。
おずおずと顔を上げると、慈しむように優しい掌が俺の頭を撫でた。
まるで本当に、可愛いものにでもなったように。
それが嬉しくて、嬉しくて、どうしようもなくて、俺は滲んだ視界でへらりと黒崎さんに笑み崩れた。
途端、降ってきたキスは幸せの味だった。
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