第54話

 僕が目を覚ました時、夜が明けていた。

 明るい温かい病室の中にいる。驚いたことに、傍らに両親もいる。二人とも、僕が起きたことに気づいて、喜んだ。聞きたいことがあったけど、喋れない。母は僕が訴えていることに気づいて、メモ帳とペンを渡した。僕はそこに「栄治は?」と書いて見せた。その言葉を見て、両親は顔をしかめたが、母が答えを書いて、渡してくれた。

 栄治が警察に捕まったことを知った。すぐに「栄治のことをうらまないで。僕もうらまないから」と書いて見せた。父は「裕太」と名前を呼んだ。

「あの子のことは、裕太だけで抱え込まなくていい。父さんも母さんもいるから」

 両親は僕と栄治を関わらせたくないんだろう。体も心も傷だらけにされたんだから。僕と一緒に罪を背負っていくつもりでいるんだ。でも、二人には無理だ。大紀を間接的に殺したのは、お前らなんだから。そんな奴らに哀れまれて、栄治が発狂しないわけない。やっぱり、僕しか栄治を助けられないんだ。

 僕はメモ帳に「何もしなくていいよ 僕も何もしないから」と書いて、ちぎって、渡した。

 両親は心配そうに、僕を見たけど、僕は目だけで笑った。本当に何もしない気なんて、無かったけど、両親を追い払いたかった。メモ帳に「僕を一人にして」と書いて渡した。両親は戸惑っていたけど、父が立ち上がり、母も立ち上がった。母は「ゆっくり休んで」と優しく言って、病室から去った。僕は虚しく天井を眺めた。

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