二乃扉(にのとびら)

濁流が押し寄せてきた。

突如。


波が引いていく。

さらっていく。


歌声が強くなる。


マッチを擦った臭いがする。



白ウサギは、どこ?



辺りには、もやがかかっていて。

見回しても、トビラすら、見付けられなくて。

そんな時、


「おぉーぅい」

「おぉーぅい」


2つの声が、重なって呼んだ。


もやの向こうから、

トビラが近付いて来た。

さっきより、少しだけ小さなトビラ。


丸い把手に手を伸ばし、回す。


カチャリ


今度こそ、お花畑… では、なかった。


濃い緑。


そして、香ばしいパンの香り。


「やぁ。お嬢さん」


水煙草の煙が、私を呼んだ。


甘いバターの香りが、羽音とともに、わたしを誘った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る