殺してよ(第3回空色杯応募作品)

江葉内斗

殺してよ

 俺のじいちゃんは、生まれる前に死んでた。

 友達がいなくていじめられていた俺にとって、仏壇に置かれているじいちゃんの遺影だけが話し相手だった。

 ある時、俺は仏壇に向かって話した。


 「あの佐藤とか言うやつ俺のことさんざんいじめやがって、いっそ死ねばいいのに」


 次の日、佐藤は登校中に車に轢かれて死んだ。

 俺はびっくりした。そして喜んだ。これはじいちゃんの呪いだ。俺が死ねと思ったやつは死ぬんだ!!

 それからと言うもの、俺の悪口を言うやつは片っ端からじいちゃんに「殺してよ」と言った。俺が「殺してよ」と言ったやつは全員事故か何かに巻き込まれて死んだ! ざまあ見ろ!!!


 ある日、俺は母ちゃんに怒られた。

 数学のテストの点数が八十点だったからだ。

 俺の母ちゃんは九十点以上は認めないとか言うクソババアだった。あんな親のもとに生まれたことが人生最大の不幸だ。あんな母親死ねばいいのに。

 そうだ、いっそじいちゃんに殺してもらおう。今ならできる。


 俺はじいちゃんの仏壇の前に座ると、こう言った。

 「じいちゃん、俺の母ちゃんが俺をいじめるんだ。殺してよ、じいちゃん」

 それから俺がキッチンに行くと、母ちゃんは首をつって揺れていた。

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