大好きな彼

本を読んでいる彼。

そんな彼の横顔を隣でみていた。

すると本を閉じてどこかへ行こうとする彼。

彼の事をしっかりみてないと目で追いかけないと私が気づいた頃にはいつも離れていってしまう。

そんな気がする。

手を洗いまな板と包丁を出し、玉ねぎを切り始める彼。

そんな彼に抱きつきたいと思った。

とにかく不安だった。抱きついていないと彼がどこかへ行ってしまう。彼がいなくなったら私は生きていけない。

彼の心が彼自身が私から離れていないか確認したかった。

しかし改めて考えてみると包丁を使っているところに抱きつきに行くなどそれこそ迷惑だ。

彼がさらに離れていってしまう。

だから私は彼の隣にそっと行き彼がきているニットの裾を少し引っ張った。

「んーどうした?」

私はその甘い声を聞いてどこか安心した。

すると前がどんどんぼやけてきた。

彼はきっと今手を止めて私の顔を見ているだろう。だけどその顔がみたい顔がはっきり見えない。彼は体の向きを変えて

「また不安になっちゃったの?」

とまたやさしく甘い声で私の頬を両手で包み撫でながら私に問いかけた。

私は声が出ず。頷くと。

「安心しなさい、俺は貴方からはなれないから、貴方がいないと俺も生きていけないから」

そうやって彼は今微笑んで私を胸の中に閉じ込めた。

きっと私たちのこの重い愛は私たちにしか受け止めることができない。

だからまた私達はお互いに依存して抜け出せなくなる。

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