亜空間屋敷の大改造

「ジャックさん、この魔法の部屋って配置を考えたのは貴方ですよね? 今から変更する事は可能ですか? 例えば、増築とか」

「増築? そりゃできるけど、アリスさん専用の個室が欲しいって事か?」


 この人、基本的に現状を変えるのが面倒って人だな。

 分かっていない様子に、私は首を横に振って説明した。


「それもありますけど、タルトさんたち三人の部屋も作ってあげないと、一人用の寝室にぎゅうぎゅう詰めなんてかわいそうじゃありませんか」

「へ? ボクたちってかわいそうなの?」

「狭い中くんずほぐれつするのも結構楽しいわよねぇ」

【不満は感じません】


 ちょっと黙っててくれないかしら。


「貴女がたはいいかもしれません。ですがジャックさん、貴方も将来は恋人ができて、結婚を考えるようになるでしょう? そうなったら彼女から見て、見目麗しいお嬢さんがたと仲睦まじくする振る舞いはどう映ると思われます?」

「御主人ケッコンするの? お嫁さんも一緒にまざればいいよっ!」

「いや、だから……」

「回りくどいわねぇ、正直にアタシたちとイチャイチャされて嫉妬してますって言えばいいじゃなぁい?」

「人妻の私が、誰に嫉妬するって言うんですか! あくまで一般論ですから!」

【……】


 天然と小悪魔系に挑発されてつい熱くなり、ぎゃあぎゃあ言い合っていると。

 ジャックさんがパン、と手を叩いた。


「分かった、増築……いや、いっそ大改造しよう」

「え……いいんですか? 自分で言うのも何ですが、部外者が口を出し過ぎな自覚はあったんですが」

「もう部外者じゃない、あんたはもう仲間だろ。意見を取り入れるのは当然だ」


 我儘言うなと叱られる事も想定していただけに、パーティーの生活に関わる変更が受け入れられたのは心にきた。


「と言うか元々俺一人だけの住居って前提で設定してもらってたから、狭いと思ってたんだよな。けどお前らが気にしてないし、作り変えるのも面倒だったからそのままにしてたんだよ。今回はいい機会だ」


(やっぱりこの人、ずぼらだわ。こういうダメなところが三人ともほっとけないのかも……魔物にそう思わせるって逆にすごいけど)


「って事で、要望があれば部屋の希望とか言ってくれな。この際だからでかいの建てようぜ」

【マスター、魔道具『魔法のドアノブ』の設定変更で消費する魔力は――】

「分かってるって。お前たちには世話かけさせちまうけど、頼むよ」

【……了解】


 それっきりパイさんは黙り込んでしまった。ジャックさんがテーブルいっぱいに白紙を広げ、設計図を描き始めると、必要ないと言っていたタルトさんやショコラさんもノリノリで希望を出してくる。

 私は、正式に彼らの仲間になれた喜びに全身が震えるのを感じていた。


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