初めてのクエスト③

 柵の出入口に戻ると、門番と話し込んでいたダイナがこちらに気付いて手を振ってくる。


「アリス様、こちらです! ……どうしたんですか、その方たちは?」

「群生地に向かおうとしたら、ちょうどダンジョン帰りの彼らが通りがかって、ご一緒する事になったのよ」


 軽く事情を説明すると、冒険者たちは改めてダイナに自己紹介をした。


「一行のリーダーをやっている、剣士のグラディウスだ。よろしく」

「武闘家のクローバと申す」

「アダマスよ。魔術師なの」

「神官のアモレアといいます。よろしくお願いします」


 職業もバランスが取れていて、なかなか理想的なパーティーじゃないだろうか。あ、でも大所帯で交代制だと言ってたからこれで全員という訳じゃないのか。

 ともあれ出入口を塞いでいては邪魔になるので、ひとまず私たちは柵の外に出る事にした。門番とすれ違う時、こそっと耳打ちされる。


「そこのメイドに聞いたんだが、領主に嫁したという事は、ひょっとしてワンダー伯爵令嬢なのか?」


 ぎょっとしてダイナを見遣ると、申し訳なさそうに手を合わせられた。まあ、私自身こんな格好でギルドでも思いっきり名乗ってたし、バレても別に困らないんだけど。


「そうですけど、何か問題でも?」

「いや、実は学園の卒業生なんだが、君は殿下のお気に入りを迫害した悪女だと聞いている。メイズ侯爵に嫁ぐのも罰の一つだと囃し立てる者もいてな……実際のところはどうなんだ?」


 まさかこんな王都から離れた場所で卒業生に合うとは……好奇心が隠し切れない様子で非常にめんどくさい。何よりお昼時で空腹なせいかイライラしてきた。


「真実がどうであれ、私は一年間修道院にてその身を修め、王家からはエディス嬢の件は手打ちとされております。これ以上は野暮じゃございませんこと?」

「そうなのか……まあメイドによれば君は侯爵にベタ惚れで、追いかけるために冒険者になったそうだからな」


 いや、ベタ惚れってところは邪推で……でも一応夫婦なんだし否定するのも何か。ならどうして探しているんだって話だし。

 納得してくれたようで早々に話を切り上げ、私はダイナとグラディウスさん一行と共に近くの宿場へと入っていった。


 この小さな集落もダンジョン発生後にできたらしく、クエストを受けた冒険者たちがよく利用するので宿屋や食堂は非常に潤っているとか。魔王が復活するだの騒がれていたというのに、こんな魔の森の真ん前でよくやるわ。


「グラディウスさーん、おかえりでげすー!」


 彼らお勧めの店に入ろうとしたその時、道化の格好をした妙な男がこちらにドタドタ走ってきた。


「アリス嬢、紹介しよう。彼が我がパーティーの控え、遊び人のジョーカーだ」

「ひゃあ! 綺麗な花嫁さんだなあ~。あちきメロメロでげすよ~」


 え、この芝居がかった人も冒険者? 遊び人って職業なの……?


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