第274話 その国の将来は、国民のもの
こちらに来てから一ヶ月、我が国のシュバルツ領港町にいた捕虜二千余名が、祖国へと帰って来た。
我が国への賠償額が確定したことで、捕虜を返還する運びとなったから。
乗って来た船は、超大型船三隻と大型船三隻。
わざわざ魔道具船に改修して返してやるなんて気前がいいと思ったら、鹵獲した船は全部うちの物だそうだ。
要るのかあんな大きな船?
降りて来る元捕虜たちの表情が二極化してるのも気になる。
祖国に無事に帰ってこられて家族に会えるのは嬉しいに決まってる。
なのに暗い顔で降りて来る人たちは、祖国の劣悪環境に戻る不安からか。
大丈夫だよ。国民を虐げて利益を搾取してた権力者たちはみんな捕まったし、私が保冷魔道車や冷蔵食料備蓄庫を各都市用に作ったから、食料事情もかなり改善してるよ。
私はそのうちいなくなるけど、魔導機械の技術者いるから魔法陣以外は修理できるし、魔法陣要るならうちから魔法陣買えばいい。
実はこの方式、各国から魔法陣だけでも売ってほしいとの要望が出たので、王子様が魔道具平和利用同様ルールができたら売る方向で話を進めてる。
というか、すでに平和利用のルールは草案ができてて、次の国際会議で批准するらしい。
ここにいる各国代表なんて、その草案で個別契約したいとまで言ってきてる。
魔法陣作れる魔道具技師を自国で持つのはかなり先になるから、とりあえず組み立てと修理ができる者を確保しようという狙い。
それならここの魔道機械技術者は即応できるから、出稼ぎがてら他国に行くのもいいだろう。移住しちゃいそうだけど…。
この国、うちへの賠償や国際法違反の制裁金支払いがあって財政ひどい状態だろうと思ってたんだけど、意外なことにかなり余裕があるらしい。
捕縛された権力者たちの私財を没収したら、出るわ出るわ宝の山。
魔道機械を法外な値段で売って、さらに自壊機構を組み込んで修理費でも荒稼ぎしてたみたい。
考えてみれば、魔道機械ができてから二百年近くは、この国の独占技術だったわけだ。
魔道機械は全世界で必要とされてたから、とんでもない儲けだったはずだ。
変質魔素による魔獣の発生原因となった魔素吸収魔法陣の件で賠償金支払ってすっからかんになったとしても、それから三十年も経てば、法外な値段と故意の故障修理で世界中から大金をせしめられただろう。
魔道機械を法外な値段で売っても法に触れるわけではないし、修理にしても、自壊機構で壊れたのか普通の故障だったのか、今となっては判断が付かない。
つまりこれ以上の賠償金や制裁金は発生しないから、残ったお金は国の運営に使えることになる。
それでも今後魔道機械は売れないだろうし、修理も徐々に減っていく。
しかも自壊機構による損傷だった場合は、無償修理どころか賠償が発生しかねないため、リコールが必要だ。
今あるお金は減る一方だから、大切に使ってほしい。
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