第272話 有能すぎるのも考えもの

うちの兵士さんたちは、魔獣の討伐、緊急連絡、要人警護、緊急物資輸送と大活躍。

私はそれに魔道機械の魔道具化も加わって目が回るほどの忙しさ。

なのに、遅れてやって来たアランジャさんに、私しかできないからと連れ出され、変質魔素発生現場付近の残留変質魔素も調査。


隠しドックや地方領主邸なんか、制圧までさせられたよ。

私も重要だと思ってるから断るわけにも行かず、他の魔導師さんたちと現場周辺を徘徊しては周辺住民にせっせと聞き込み。

時間かかりすぎる!


だけど本当に恐ろしいのは、たった一週間で王都機能を掌握し、さらにその後二週間で国内を掌握してしまった各国代表たちだろう。


変質魔素発生という国際法違反者捕縛権を武器に、地方貴族を次々に捕縛して公権停止。

逆らう貴族たちは私やうちの兵士さんが文字通り吊し上げ、戦闘行為にすら発展しない。

王都近郊の町に派遣されていた騎士団は、半壊どころか壊滅に近い状態だったから、各町には貴族に従う大きな戦力なんて存在してなかったから。


魔素吸収魔法陣を使っていなかった貴族たちも、平定された大都市に生活を依存していたために、次々と恭順。

しかし恭順には、不正や抑圧的支配をしていない貴族という条件があったため、支配地域の住民からの証言や証拠提出で、その立場を追われることになった。


結果、貴族で残ったのは、王都の権力者たちから味噌っ滓扱いされていて、支援すらまともに受けられなかった辺境の少貴族たちだけだった。

いわゆる自給自足が当然の田舎だけが、住民と領主が協力しあって生活していたわけだ。


たった三週間で国内を掌握してしまった各国代表。

元々国元で高度な教育を受けていて、各国を代表できる能力を持った人たち。

十二人も集まれば、一ヶ月以内に一国を掌握できるらしい。


ただ、今後の展望については課題が大きい。

国外から食料を得るための主要産業が無いのだ。

ミスリルの鉱山は三箇所あるが、鉱山資源は有限だ。

掘り尽くしてしまったら、後は売る物が無い。

各国代表のみんなは会議で頭を悩ませてるけど、重要なことを忘れてませんか?

私にも意見を聞かれたので、ここはひとつ悪者になろう。


「みなさんは国際会議の各国代表です。国際会議は、いつからこの国を統治することになったのですか? みなさんがこの国のために親身になって働いていらっしゃるのは、尊敬に値する行為だと思います。ですが国際会議が他国の進む未来まで決めてしまっては、この国はまるで国際会議の属国のようになってしまいます。国際会議が要請されたのは、あくまで王都の臨時的な運営です。みなさんの能力がありすぎたために国の統治まで手掛けるようになってしまいましたが、国際会議は一刻も早くこの国の者たちに統治を任せるべきではないでしょうか」

「「…」」

「ヒナタ嬢の言う通りだな。我々は国を統治することを義務付けられた王族たちだが、どうやら無意識に国元と同じような感覚になっていたようだ。我らはこの国の者たちが国を運営できるようにすることを第一として動くべきであるな。各人の下に付いたこの国の者たちが国を運営できるよう、動いていこう」


各国代表は自分たちが手を出しすぎていたことを反省し、この国の者たちに運営時の判断基準などを教える方向に舵を切った。

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