第271話 彼の国の王都、国際会議が運営します
一方私はといえば、城の冷蔵食料保存倉庫を魔道具化してます。
魔素吸収魔法陣に案内してくれた文官っぽい人、魔道機械技術官のレヤンシュさんに、貴重な食料をダメにしたくないと懇願されました。
私たちが魔獣討伐してる間、一人で魔力供給してたみたいで、魔力枯渇で顔色悪くなってた。
レヤンシュさんは平民だけど、貴族の上司は仕事言い付けるだけだったので、実務はほとんどレヤンシュさんがこなしてたみたい。
どうりで秘密の入り口も知ってるはずだよ。
私、魔獣討伐中に魔獣を集めようと何度か魔素吸収してたので、魔力ほぼ満タン。
冷蔵の魔法陣を私のに変えて、魔力球で動作するようにしておこう。
材料は既存のものを使えばいい。
かなり広い保存庫で、効率の悪い魔法陣が十六個も付いてたよ。
とりあえず、私の魔法陣八個にして、魔力球動作式に変えておいた。
しかしこの保存庫、食料が山のように保管されてるな。
どこぞの物流倉庫みたいだ。
港の倉庫はどうしてるのかと聞いたら、あそこは腐らない物品用で、食料は荷降ろししたらそのままここに第一優先で運ばれるらしい。
ついでなので照明の動力源も魔力球式に変更したけど、魔力効率かなり悪い。
城の全ての発光用魔法陣を作り変えるのは時間がかかりすぎるので、負荷側にミスリル合金の抵抗付けて照度を落とし、普段使わない場所はミスリル線をカット。
さらに、広い部屋の照明はスイッチ付けておいた。
配線が天井裏通ってたのでスイッチも天井だけど、無駄に魔力球浪費するよりはいい。
お仕事終わってふと気付いた。
レヤンシュさんに魔法陣やミスリル合金作るとこ見せちゃった。
いかんな。貯め込んであった大量の食料見て、腹を立てながら作業してたから気が回ってなかった。
ちょっと青い顔してレやンジュさん見たら『誰にも話しませんし、私は国際会議の御用が無くなれば牢に入りますから』と、悲しそうに笑っていた。
そうか。実務を一手に任されてたら、変質魔素が発生してる魔素吸収魔法陣も、当然メンテしたりしてるよね。国際法に触れる行為だって、分かっててやらされてたんだね。
ここにも愚かな権力者の被害者いたよ。
各都市の魔素発生魔法陣の資料を纏めるというレヤンシュさんと分かれ、会議室に戻って会議内容を聞いた。
城の兵や使用人たちをまとめている者、行政関係の実務責任者、城下から呼んだ住民の顔役たちから、正式に国際会議へ王都の運営と支援を要請されたと。
まあそうなるよね。
城の者は皆権力者たちの悪行を知ってる。
兵たちが牢にブチ込んだのは、悪行を犯したか指示した奴ら。
ここで悪行を犯していない貴族でもいれば臨時代表として扱えるけど、悪行犯しまくってる権力者の中にいて、反抗しながら無事な貴族なんているわけない。
城にいた権力者全員が犯罪者として牢にいるから、当然公権も停止。
だから今この国は今、代表者不在なんだ。
地方貴族は残ってるだろうけど、その貴族が持ってるのは地方の自治権だけ。
国を代表するなら、国民や他の貴族から正式に認められなければならない。
現状は、公権を行使できる者がいなくなった王都という都市の住民から、国際会議が運営と支援を要請されたわけだ。
城門での王弟殿下の演説は、この状況を見越して要請をさせるための発言だったんだ。
そして私は、追加のお仕事を仰せつかった。
一人で街道付近の魔獣を倒しつつ港の船に各国代表の指示書を届け、クサフグ君二機を城に持って来いって。
国際会議の誰かが城に詰めて采配しないと、食料輸入はストップする。
しばらくは支援に持って来た食料でなんとかなるけど、輸入を再開させるにはお金が必要。
王城に残る食料と公金を管理しないと、あっという間に食糧不足だ。
住民たちの要請を受けた以上、国際会議は王都を運営しなきゃいけない。
だけど国際会議の本題は、変質魔素発生容疑者の犯罪の立証。
留置されてる権力者たちの取り調べや、犯罪の証拠証人の確保もしなければならない。
結果、国際会議の各国代表は、全員が城に缶詰。
80km離れた船とのやり取りや本国への連絡が頻発するため、クサフグ君連絡便を王子様が提言したわけだ。
うん。これは当分おうちには帰れないな。
いくら嘆いてても帰郷は早くならないので、さっさとお仕事始めます。
お仕事こなせば、少しでも早く帰郷できると希望を持って。
こうして、前代未聞ともいうべき、他国の王都を各国代表が運営するという珍事が始まった。
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