第178話 やっと改修開始

王子様、街主様、ガイ、北砦組で船に乗り込み、まずはドック内の外輪船の改修です。

今回は街主様も一緒に見学。

王子様が見学許可してた。


手始めに、設置されてる魔道機械の内部構造を、魔力を浸透させて読み取って図面化してもらいます。これも実習だからね。


ノーラはやはり魔力制御力が高いだけはあるね。

私が読み取れた内部構造と同じものを図面に書いてる。

リーナとカレンはちょっと足りない部品があったり、一部間違ってる部分もあるね。

これは多分、読み取りが不正確な上に機械の仕組みに慣れてないからだろうな。

二人の図面だと、明らかに動かない構造書いちゃってるからね。


リーナ、歯車の部分を円盤で書いちゃったら、滑って負荷側回らないよ。

カレンの図面は歯車っぽいけど、それだと隙間が大きすぎて動力伝わらないね。


ノーラの書いた図面と比較しながら、動作原理を説明していきます。

他の二人は、間違った部分を再度読み取って、図面に修正入れてね。


図面の修正が終わったら魔道機械御開帳なんだけど、鍵がない。

鍵はノーラに作ってもらおう。


ノーラがミスリルと鉄から鍵を作り始めたら、王子様が懐から鍵を取り出した。

ああ、そのカギは、前回私が作ったやつだね。


ノーラの作った鍵と見比べたら、形状はほとんど同じだった。

なんだ、鍵は共通で使いまわせるのか。

せっかくノーラが作ったんだからと、ノーラの鍵で魔道機械御開帳。

トラップは動作せずに、ちゃんと開けられたよ。


「これがトラップ部分か。魔道機械船の心臓部と言うべき場所にトラップを仕掛けるなど、悪意以外の何物でもありませんな」

「ああ。遠洋でトラップが動作してしまったら、乗組員に命の危険すら出てくる。これはもう、殺意の証拠と見てよいだろう」

「自分が作り上げた魔法の道具にこのような仕掛けをするなど、宮廷魔導士として許せません! 殿下、ぜひとも彼の国を糾弾せしめて下さいませ」

「あと二か月程で魔物対策の国際会議が開かれる。陛下はその場で彼の国を追い詰める算段をしておられる」


大人組が横で憤慨してるけど、私たちは改造に忙しい。

だけど今の話は危ない気がするので、ちょっとだけ口を挟もう。


「王子様、その国際会議って、どこで行われるの?」

「すまぬが、各国のトップが集まるだけに、場所や日時は漏らせぬのだ」

「ああ、私の聞き方が悪かったよ。その会議の前後で、襲撃されやすい場所に気を付けてほしかっただけなの。例えば船での往路や帰路で、魔道機械船の艦隊に襲われた場合の対処とか」

「……各国が出席するなら海路を使える場所と予想したか。正解だが、さすがに魔道機械船の艦隊は無理であろう」

「彼の国は、この国が魔道機械船を修理できる技術があると想定して動いてるから、その会議でも本腰入れて来てる可能性が高い。自国の致命傷になりかねない危険性を認識してて、二か月も準備期間があるのに何も対策執らないの?」

「……万が一洋上で我が国の船が沈められたとしても、悪意ある魔道機械の構造や魔道具船の有用性は否定できぬぞ」

「どうせ魔道具船の性能を見せつけるために、今からできる外輪の無い魔道具船で会議に行くんじゃないの? その魔道具船が出航と同時に爆発したり洋上で轟沈したりしたら、魔道具船の技術は危険ってことにならない? そうなれば、魔道機械が故障するように作られてるって話すら、爆発するような怪しげな技術使う国だから嘘の証言してるって難癖付けられるよ」

「………そこまでするか?」

「壊れるように作った魔道機械を高値で売る国だよ? 信用なんて欠片も無いと思うけど」

「……襲撃があると仮定した上で、全行程の警備計画を立てよう」

「お願いします。あ、でも空振りになったらごめんなさい」

「いや、忠告してもらわねば、真の危険性には気付けなかった。彼の国は魔物に対して共に戦う国ではなく、自国の利益だけを求める仮想敵国なみに注意しよう」


王子様の眉間に深いしわを刻ませる話になっちゃったけど、前世での国際情勢だとありうる可能性だったから言わずにはいられなかったよ。

敵対国同士がお互いに罪を擦り付け合う事なんて、ざらにあったからなぁ…。

リーナがお爺さんを亡くす可能性なんて、極力減らしたいからね。

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