第174話 再び港町へ1/2

そろそろ魔道具技師見習いの受け入れをと代官様に相談に行ったら、第二王子殿下から二度目の魔道機械船改修依頼が届いてた。

一度目に改修した船の性能評価が期待以上の結果になったようで、今度は外輪船改修x1、新造船への魔道具推進器取り付けx3という依頼だった。


技師見習いの人選に時間がかかってまだ北砦に送れる人材が揃わないらしいので、船体への取り付けを講師の最終実習として、四人で出かけることになりました。


目的地は、前回と同じ南の港町。

どうやらあそこは街主様が第二王子殿下にかなり協力的らしく、人払いやドック外周警護などで、機密保持に融通を利かせてくれる場所みたい。


今回のお供もガイだけで、総勢五人。

お忍びの旅になるので、下級貴族の娘(リーナとノーラ)と若い護衛(ガイ)と侍女(カレン)侍女見習い(私)の一団っぽく見せたいみたい。

私までメイド服着ることになってしまった。


北砦にあった荷車も、わざわざ大きな窓ガラス付きの箱馬車に改造したからね。

ちなみに御者台と座席との間は、開閉式のフロントガラスみたいになってます。

だって、御者席にいても中とお話したいじゃん。


護衛人数少ないから人攫いには襲いやすいと見られる可能性もあるけど、実際の戦力は王都の兵士数千人に匹敵するはずだから、万一襲われても簡単に返り討ちだね。

しかも移動は空中だし、あの港町は町中も治安がいい。

そしてドック内での作業だから、一般人は近づけないし。

殿下や街主様、代官様も目立たないように、なおかつできるだけ安全にと、かなり神経使ってるみたいだね。


第二王子殿下と港町の街主様に早馬で先ぶれを出し、私たちは材料集めと魔道具用の工具トランク作り。

ミスリルを廃坑から採ってきて、魔法陣用の石英も用意。

変速用のミスリル合金と魔力球も作って、革製の工具トランクに詰め込みました。

出発まで数日あったので、変速レバーや推進用の魔法陣も、見本見せながら各自で作成してもらいました。


ついでなので、荷車改造もみんなでやって、御者席に馬車用推進器取り付けて実習教材にしたよ。

石英ガラス窓作りや箱部の木材変形、T字ハンドルやブレーキ機構も作ったので、いい実習になったと思う。


そして出発当日、天気も快晴で風も穏やか。良いフライト日和。

早朝に出発できるように私も前日から北砦に泊まり込んで、未明から起き出して支度してます。


今回は私たちが港町に出向くこと自体がバレないように、北砦から西砦に行き、そこでガイを拾ってから港町を目指します。

この経路だと町から視認されることが無いので、たとえ町にスパイとかいても、私たちは北砦に、ガイは西砦にいるように思われるからね。


朝もやにけむる森上空を箱車(箱馬車の馬無しだから箱車)で飛び、西砦上空に来たらガイが単独飛行で登ってきた。

ガイ、城壁の物見塔屋上で、空見上げて待ち構えてたんだね。


進路を南南東に変え、私の巡航速度で港町目指します。


「ご搭乗の皆様、当機は港町まで二時間のフライトを予定してます」

「あはは。なんだか客船に乗ったみたい」

「さすが姫様、客船乗ったことあるんだ」

「お父様と一緒にね。でも、船を降りたら地面が揺れてるみたいで、びっくりしたわ」

「あー、長いこと大型船の船上で揺られてると、そうなっちゃうよね」

「おいヒナタ。大型客船で歓待された経験無きゃ、さっきのアナウンスは言えねえだろ?」

「うん。このメンバーなら、そういった経験がある事バレても大丈夫でしょ」

「……客船でも、乗組員の案内が付くなんて高位貴族か王族くらいよ?」

「まあ、そのあたりはノーコメントで。大型客船に乗った経験があるっていうのはほんとだけどね」

「ヒナタってほんと不思議よね。目の構造知ってて、私の目まで治しちゃうし」

「私のことを王孫殿下って呼ばれた時はびっくりしたわ。正確には王孫女だけど、王孫女なんて呼び方、他国の王族がわたくしを呼ぶ時くらいしか使わないもの。しかも“女”を省いて短縮してるから、ヒナタは王孫女なんて言葉を知ってる上に、短縮して使っても不敬にならない立場って可能性が高くなるわ」

「うわ、なんかヒナタならありえそう。そう言えば、お父様もびっくりしてたよ。主語を伏せた会話出来たり思考を先読みされたって、大絶賛だったもん」


ああ、王孫女殿下じゃゴロが悪いから王孫殿下って呼んだんだけど、王孫だと王の孫全員を指す言葉になるから、リーナ個人を呼ぶのには不適切か。

私の立場を勘違いさせちゃったみたいだけど、訂正すると身分の話になってヤブヘビな気がする。黙っとこう。


「うちの親父もだぞ。宰相の私兵裁判の時の、魔物圏最前線領による懲らしめ行動読まれてたって、あきれてた」


うん、五歳を疑われたね。こんなちっこい私なのに。


「その上、新魔法や魔道具開発してるし知らない料理までできちゃう。うちの妹たちと違いすぎて、五歳に見れないわよ」


また五歳を疑われた。

まあ、精神年齢はゴニョゴニョ歳だから、その疑問はもっともだ。

だけど、異世界(日本)で成人女性やってたらキャトられて肉体改造されて異世界(ここ)に放り出されたなんて、絶対信じてもらえないぞ。

なにせ、未だに当の本人が信じきれてないんだから。

でも、疑問に思ってても誰も追及はしてこないんだね。ありがたいな。

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