第171話 魔道具技師 講師養成1/3

朝来た。

身支度整えてササっと朝食済ませ、朝もやの中を監視塔に向かいます。


兵士さんたち、みんな勤勉で朝早くから動くから出遅れないようと思ったのに、監視塔着いたらもう荷車が並んでた。みんな早すぎ。


朝の挨拶済ませて、荷車三台で北砦へ。

御者は私とノーラ、カレン。

そしてホバーボード(木板)で周りを警護する見習いさん四人。

要人護送の編隊飛行?


北砦着いたら荷物の運搬は見習いさんたちに任せ、私は指示役。

見習いさんたちは、どこに何置くか知らないからね。


カレンはリーナのサポートに付け、ノーラはせっせと自分で荷物解いてる。


リーナ以外全員が荷物浮かせて移動させてるから、仕事が早い早い。

とりあえず荷物を各部屋に運び込んだら、見習いさんはお仕事終了。

荷車二台で町に帰って行った。

見習いさんも荷車飛行できるようになったから、楽でいいな。


私は厨房で調理器具や食器類仕舞ったら、お風呂やトイレの備品配置とストック品収納。

全施設を使うわけじゃないから、適当でいいよね。


小一時間で大雑把な配備は終わったので、厨房使ってお茶の用意してみた。

うん、使い勝手は悪くないな。


みんなを呼んで、中庭のガーデンテーブルでお茶休憩。

ワニ魔寄って来てるけど無視で。


「リーナ、住環境激変しちゃてるけど、何とかなりそう?」

「実はかなり憧れてました。マナーにうるさく注意されることも無く、お客様の対応で愛想笑いの必要もない生活。お勉強も魔法や魔道具という、わたくしの好きな分野。しかも、わたくしがいただいたお部屋なんて、実家の倍くらいの広さですのよ」

「そうなんだ。でも、ここだと自分のことは自分でしなきゃいけないから、大変じゃない?」

「お料理とかして見たかったし、なにより自室では一人でいられます。王都では自室にも侍女がいるから、くしゃみにも気を遣うのよ」

「その気持ち、すっごくよくわかる! 目が見えなかったころなんて、どこから誰が見てるか分からないから、お尻掻くのなんて絶対できなかった。ずっと座ってるから結構かゆくなるのに」

「ですわよね! もぞもぞしたり、座り直すだけでも叱られますの。ベッドとトイレの中だけが安住の地でしたわ!」

「ここでは好きにしてだらけてもらってもいいけど、人前ではちゃんとしてね。北砦行ってお姫様がお行儀悪くなったなんて言われたら、ノーラやカレンが悪く言われるから」

「それは大丈夫だと思います。人目があると、無意識にお姫様モードになってしまいますから」

「うわ、もうそこまでなっちゃてるんだ?」

「はい。窮屈で仕方ありませんでしたわ。バラしてしまいますが、今回わたくしが魔道具技師見習いに立候補しましたのは、王都の窮屈な生活から抜け出すためですの。ヒナタに『自分の目的のため』と言われて、バレているのかとひやひやしましたわ」

「あ、なんかごめんね。あの時は、何か目的あるんだろうなぁくらいしか思ってなかったから」

「そうでしたのね。でもヒナタ、改めてお伺いしますが、わたくしは魔道具技師になれるのでしょうか?」

「目的のために頑張る気持ちがあれば、ほぼ間違いなくね」

「…その頑張りがどの程度必要なのかが不安なのです」

「あぁ、そこか。…ねえカレンって、今レベル11だっけ?」

「そうだけど…。ヒナタ、何する気?」

「カレンも魔道具技師にならない?」

「…待ってヒナタ。私はノーラやリーナのお世話しに来たのよ。代官様からそんなこと言われてないわ」

「なるなとも言われてないでしょ? どうせリーナを魔道具技師に育てるんだから、一緒に話聞いてるだけでなれちゃうよ?」

「待って、お願いだから。私、ただのメイドよ?」

「すでに違うし。ノーラやリーナの護衛で、領付きの魔導師でしょ?」

「それはそうだけど…」

「カレンはレベル上がって魔素感知や魔法は練習中だよね? リーナの少し先にいるから、お手本に丁度いいんだけど。リーナが今できないことを手伝うんだから、これもある意味リーナのお世話でしょ」

「……お手本ならノーラでしょ?」

「ノーラはもうほとんど魔道具技師だから。魔法陣、簡単に作っちゃうもん」

「なんだか私、疎外感感じるかも…」

「ノーラは頑張りすぎなのよ。私が魔法陣作るのを魔素感知で見ただけで真似できるなんて、はっきり言って異常よ?」

「異常って…ヒナタに言われたくないよ」

「だって、私でも魔素感知でそこまでできないし。ノーラは自分が人のためになれることがうれしくて仕方ないんでしょ。でも、少しは自制しないと、体壊すよ」

「……私は南町救援に行ったりしてないもん」

「行ったら私と同じことできちゃうじゃん。それに、兵士さんたちの輸送をほっぽっとくわけにいかなかったでしょ」

「……ぶぅ」

「むくれてもだめよ。みんな貴女のこと心配してるんだから、少しペースを落とそうよ」

「…分かった」

「ヒナタ、それは貴女にも言えることよ」

「あ………はい」

「ねえ。それで、カレンはわたくしのお手本になってくださるの?」

「あ、えっと…。私、平民よ?」

「そんなことを気にしていましたの? ヒナタが『ここには身分差を持ち込まないこと』と言って、お父様やご領主は了承されているのです。ですから身分差は理由にしてはいけないわ」

「ヒナタ、あなたそんなことを王子様やご領主様に言ったの? 無茶苦茶するわね…」

「だって私たちただの子供じゃん。身分関係なく仲良くしていいと思うの。ここにいる間だけでも、リーナに気兼ねなく過ごさせてあげたいの。ね、お姉ちゃん」

「わたくしからもお願いします。お姉ちゃんになってください」

「ああもう! 分かったわよ。でも、姉として接するからには、私が言ったことはちゃんと守りなさいよ!」

「「「はーい」」」


カレン、つくづくお姉ちゃん気質。

こうして、カレンも魔道具技師になるととが決まった。

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