第170話 北砦視察
北砦近くまで来たら雨が降り始めたので、盾魔法展開して傘代わり。
荷車放置すると荷台も濡れちゃうので、格納庫に収納しといた。
格納庫、雨の日には便利だな。作っといてよかった。
ガイ、ジト目は止めて。ただの屋根だから。
屋上から階段で降りたから三階から案内始めたんだけど、各部屋にあった魔道具に、カタリーナとヘンドリックが興味深々。
ヘンドリックは南砦でもしつこく見てたのに、まただよ。
卓上ランプが、花形や球体、キノコ型、動物型とバリエーションあるから、カタリーナが気になるのは分かる。
うさぎ型ランプ抱きしめてるけど、もふもふ感は無いよ?
二階は兵舎のつもりだったからさらっと流し、一階に来たらワニ魔寄って来た。
よしよし、ワニ魔罠の実演できるぞ。
「ねえリーナ(カタリーナの愛称)、ワニの魔物が来てるけど、驚かないでね」
おっとそうだった。ノーラがカタリーナに注意してくれてる。
急にワニ魔見たらびっくりするよね。
「ワニの魔獣だと!? 危険では?」
「大丈夫。罠に嵌って身動き取れないから」
ワニ魔罠に近付くと、ワニ魔が鉄格子に噛み付いてる音が聞こえてきた。
王子様の後ろに隠れながらついてくるカタリーナ。
だよね。これが一般的な反応なんだった。
「これは…たしかに安全だな。討伐もしやすそうだ」
「ちょうどいいから、リーナのレベル上げしようか。一気に二つも上がらないように、二人で分けるといいね。ノーラ、お願い」
「うん」
ワニ魔罠の鉄格子前に立つ二人。カタリーナは恐々だ。
一瞬でワニ魔は消え、床に魔核が転がった。
「きゃっ!」
「あ、先に説明しとくべきだったね。今、身体がふわっと軽くなったでしょ。それがレベルアップなの」
「ええ、びっくりしたけどたしかに身体が軽いわ。これがレベルアップなのね」
「そうそう。レベルアップするたびに体調良くなって、魔力が増えて、力が上がって、視力や聴力もよくなるの」
「いいことだらけじゃない。なぜ皆がそうしないの?」
「それを答えるのは父親さんの役目だね」
「む、そうだな。リーナ、ワニの魔獣は死人覚悟で熟練兵士六名以上で討伐するのだ。いや、していたのだ。これほど安易な討伐とレベルアップは、この罠のおかげ。だから、決して魔獣を侮ってはならんぞ」
「熟練兵六名以上で死人覚悟…。はい、決して侮りません」
「うむ」
一階をぐるっと回って設備を紹介した後は、中庭地下に移動。
下水処理施設説明したら、ヘンドリックが処理槽にへばり付いた。
中身汚水だから気分的にばっちいよ、止めなさい。
「地下なのにこの明るさ。しかも畑だと!?」
「ここを整地した時に出た土の置き場が無くって。腐葉土っぽくてもったいなかったから、畑にしたの。でもなにも植えてないから、畑として使えるかどうかは分かんないよ」
「そうなのか…。だがもし畑として使えるなら、土地に空きの無い王都でも小麦や野菜が作れてしまうぞ」
「この砦を使い始めたら、技師見習いの農業経験者に試してもらえばいいよ」
「平民枠には農家の次男三男が確実に応募するだろう。ペンガス、頼めるか?」
「はい。うちの領内の農家からも何名か入れれば、充分に検証できます」
「あ、選考はくれぐれも人柄重視で。魔人並みの力を持った悪人なんて、育てたくはないでしょ?」
「当然だな。選考方法は、ペンガスと共に慎重に詰めよう。だがそうなると、貴族枠はほとんど埋まらんぞ。なにせ貴族の子には、武術を仕込まれて増長する者も多い」
「女の子も?」
「はっ! 無意識に男子だけを対象にしていた」
「女の子の方が、地道な作業や細かい作業に適した子が多い気がするの。暴れん坊なんてまずいないし」
「選考は女子を中心にすべきだな」
「そのあたりはお任せします」
「…責任重大だな。我らの手で兵がかなわぬ悪人を生むやもしれぬ。恐ろしくなってきたぞ」
「そういった決断も、為政者のお仕事でしょ?」
「くぅっ……王子教育されているころに戻ったようだ」
「あ、ごめんなさい。なんと言うか、まあ、頑張って?」
「…」
下水処理槽に頬ずりしそうなヘンドリックを引っぺがし、一階に戻ったらまたワニ魔反応。
あ、こっち来た。
「リーナのレベル、もう一つ上げられそうだよ」
「ワニ魔獣か? 日中でもこれほど来るなら、なぜ来た時には全くかかっていなかったのだ?」
「餌が無いから」
「…そうであった。我々が呼んでいるのだな」
リーナがレベル3になったので、水球や光球の魔法教えた。
魔素感知と魔力制御をノーラに教えてもらえば、かなり上達は早いだろう。
砦見学ツアーが終了したので、町に戻りました。
代官屋敷でみんなと別れ、西砦に帰るガイをお供にお買い物。
別荘用の布類や食料も買ったから、途中で小型荷車借りに兵舎に戻る羽目になったよ。
私用の荷車も作るべきかな?
荷車に荷物満載しておうちに到着。
明日にでも別荘に荷物運びたいけど、明日は北砦稼働のための物資搬送をお手伝いする予定なの。
昨日大人たちが色々決めてたので、ここで女子だけで内緒話するつもりです。
しばらくは私が講師になって、ノーラとリーナを指導。
二人とも料理とかできないので、カレンがお世話係になる。
この三人は基本は北砦に缶詰めで、週一くらいで町に買い出し。
私は通いだけど、遅くなったら泊ってもいいしね。
屋敷で聞いた話の大筋はこんな感じだけど、私が考えてたよりずいぶん厳重な警戒っぷりだ。
みんなに窮屈な思いさせちゃうから、ちょっと申し訳なくって、当事者の本音を聞いときたいんだよね。
町の側はノーラとカレンという人員輸送の主軸が抜けて困るだろうと思ったんだけど、元々二人は兵じゃないから、いずれ抜けさせるつもりで見習いさんたちによる代替え輸送体制を構築中だったそうだ。
さらに新人さんたちを南砦である程度レベルアップさせて、連絡要員に養成中らしい。
私の予想ではもっとゆっくり事態が推移していくはずだったんだけど、魔道具の可能性を高く見積もった殿下と領主様が『魔道具が第一優先』と強烈にプッシュし出してこうなっちゃったの。
どうやら私は、しばらく北砦通いになりそうです。
買い込んだ荷物と食糧の収納終わったので、お風呂入ってまったり。
講師引き受けたから講習内容考えなきゃなぁ…。
あ、王子様から魔道具型推進器五十個の注文も受けたから、そっちも作らなきゃ。
鉄やミスリルはあるから、花崗岩掘削エリアで石英抽出するか。
…待てよ。石英抽出も講習に使えるな。花崗岩ごと持ってくか。
いや、その前に魔法教えないと魔法陣作れないから、そこからだ。
じゃあまずはリーナのレベル上げて……いやいや、それ以前に生活に慣れるのが先じゃないか?
リーナなんて生活環境激変するんだから、下手すると体調崩すぞ。
なんだかんだと考えつつも、ゆっくりのんびり食事してから寝ました。すやぁ~。
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