第66話 自宅に面格子付けた。だけどまだ住めない

地下室から出てきたら朝だった。

お仕事行こう。


今日のお仕事終わったら、やっと下水関連に着手できる。

おうちはガワが出来上がってるのに、下水配管無いから工事ストップしてたんだよ。

やっと進められる。


え? 普通下水配管がガワより先?

知ってる。

だけど作りたくなっちゃったんだからしょうがないじゃん!


自分に言い訳しつつ、砦到着。

カイル君を横に、ガイが檻罠の魔獣を討伐しようとしてた。


「ガイ、おはよう。そのまま討伐すると経験値分散されちゃって、魔獣が倍必要になるよ」

「ヒナタ、ごくろうさん。まだ俺たちの中で、離れて破壊矢を鉄網の網目通せる奴がいねえんだ」

「私、やろうか?」

「…頼む」


ガイと交代し、カイル君の後ろ10mくらいに立って破壊矢発射。

七歳でレベル1なら、ネズ魔八匹で上がるはず。


うん、上がったみたい。体調も変化無いみたいだから、今度はネズ魔六匹とイタ魔一匹討伐。

やはりレベルアップ。


最後にオオ魔一匹討伐して、今日のレベルアップはおしまい。

カイル君、これでレベル4だね。


「ガイ、今日の分終わったよ。明日はオオ魔十四匹要るから、後は残しとく?」

「そうだな。残しといても明後日には足りなくなりそうだな」

「うん、オオ魔だと百十二匹。そこまで上げればレベル10だから、飛び方覚えれば充分輸送要員になるよ」

「へぇ、なんで輸送要員だって分かった?」

「今一番の問題は、兵力足りなくて砦と町の行き来が難しいことでしょ。他の見習いさんより先にカイル君を集中的に上げる理由なんて、それくらいじゃない?」

「まったくもってその通りだな。見習いのレベル上げて行き来する案もあったんだが、十二歳を何人もレベル5以上に上げるには、全然魔獣が足りん」

「魔獣不足って…」

「おっと、そうだな。ここ以外じゃ、以前と同じ討伐方法のままだな。魔獣足りないなんて不謹慎か。すまん、失言だ」

「そだね。あ、ひとつ忠告あったんだった。破壊矢、水に打ち込むと大変なことになるから気を付けてね」

「ん? 大変ってどんなだ?」

「多分爆発する」

「まじか」

「破壊矢の大きさ次第だけど、かなり危ないから気を付けて」

「分かった。みんなに注意しとく」


砦でちょっと時間使ったので、ダッシュで監視塔に向かいました。


監視塔前、荷物がいっぱいだった。

大半は面格子。檻罠増設するのかな? でも、最近魔獣減ってるよ?

わたしのおうちの分もあるといいな。


着陸してお話聞いたら、面格子は砦の予備以外全部私のだったよ。

私が注文した置時計も届いてた。

A4くらいのサイズで、筐体は装飾された木製。

重錘式じゃなくて振り子のないゼンマイ式なのはありがたいけど、外装がアンティークみたいで、石壁の地下室には合わないな。


支払い済ませて(金貨持っててよかった!)飛び立ったけど、今日の後ろの二人は窮屈そう。

面格子、かなり多いよね。


今日の乗客は、二人とも正規兵。

兵士見習いが多く行っても、レベル上げの魔獣足りないもんね。


砦で荷物と乗客を降ろし、いつもの朝食タイム。

またおにぎり入ってた。いえ~い!


「今日は調理できる奴連れてきてくれて助かったぜ」

「あ、調理できる人いたんだ」

「ああ、一応兵士でもあるけどな。普段町でうまいもん食ってるから、自分たちが作った食事のまずさに、みんな閉口してたんだ。今日からまともな食事ができる」

「あはは。自分でできるように習えばいいのに」

「俺たちは食うのが専門だ。ところで、カイルに魔法練習させるの、浮くことからでいいのか?」

「浮くのはちょっとにして、ミニ水球のコントロールを重点的にした方がいいよ」

「あ? 攻撃魔法はもっと後の予定だぞ?」

「魔素を細かくコントロールできるようになると、魔法の魔力使用量も無駄が無くなって、威力の調整や持続時間も上がるから」

「それは飛行距離が伸びてくれるからありがたいな。…ん? レベルの上がらない俺も、練習すれば破壊矢が多く撃てるってことか!」

「命中率も上がるから、さらに魔力消費が少なくなるね」

「ひょっとして俺も、監視塔まで飛べたりするか?」

「レベル7だとぎりぎり片道かも。ガイは泳ぐみたいに飛んでるけど、それだと魔力消費多いから、イメージ変えた方がいいよ」

「どんなふうにだ?」

「えっとねえ…ウキ釣りってしたことある?」

「あるぞ。ガキの頃、よくやった」

「あのウキが自分なんだよ。空中に糸で引っ張られて浮いてて、投げると糸に引かれて飛んで行くの」


私はベクトルでイメージしてるけど、糸がベクトル方向と考えれば、体重を軽くして空気を掴んで泳ぐより効率いいと思う。


「そうか、俺も修行必要だな」

「森に討伐出ないんだから、時間あるんあじゃないの?」

「…正直なところ、レベルが上がらなきゃ強くなれないと勘違いしてた。槍も練習でうまく扱えるんだから、魔法もそうだよな」

「レベル上がればたしかに強くなるけど、あくまで強くなる方法のひとつだよ」

「だよな。俺も書類仕事ばっかしてねえで、訓練参加するわ」


今日も緊急案件無かったから、束ねた面格子に荷物乗っけて飛び立ちました。

面格子版魔法のじゅうたん? 積み重ねてるから分厚いけどね。


おうちに到着して、早速面格子加工。

いや、飛んでるうちに、面格子のデザイン思い付いちゃったから仕方ないんだよ。

下水は面格子の次にやるから。


正面に出っ張った場所の面格子は、つた草模様。

玄関の扉には、ガラス部に縦格子で中央部に円。

円の中には六芒星、その六芒星の中にさらに円を描いて五芒星を入れるの。

フランス領時代のモロッコで発行された、200フラン銀貨みたい。

ちょっと厨二病っぽいけど、魔法陣っぽくて洋館にマッチしそうだよね。


……うん、反省しよう。

思い付き即行動は作業時間考えてないから、工事の遅延に繋がるな。

全部の窓に面格子付け終わったら、もう夕方だよ。

おしゃれにしようとルーフバルコニーの手すりまでロートアイアンにしちゃったから、すげー時間食った。

面格子足りなくなって、全部の面格子の肉厚を削り、その分で増産したから余計に時間かかった。


面格子も手すりも全部ロートアイアン。

見た目の出来はいいんだけど、今日も下水工事できなかった。

おうち完成するの、いつになるんだろう……。


お風呂に入りながら下水処理施設の構造を考え、食事しながら設計図書きました。

そしておわん型分離魔法の魔法陣も作った。

これで汚水を受けて、粉と水蒸気に分離させる仕様です。

さあ、明日こそ下水処理施設作るぞ!

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