第59話 物資と人員輸送

朝来た。

昨日夜更かし(こっち基準)したとはいえ、二十二時には寝たはずなので、明け方過ぎに目が覚めた。


こっちって魔物いるから、日本の生活サイクルとはズレてるんだよね。

明け方前に起き出して準備して、魔物が活動しなくなる日の出と共に仕事に出て、カラ魔が出て来る夕方には施錠して家に籠るの。

だから夕暮れに町を出歩く人はいないそうだ。

多分ガイたちも動き始めてるはずだから、さっさと監視塔行こう。


監視塔着いたら、案の定ガイが外で待ってた。

傍には幌付きの荷馬車。

魔獣ごっこして遊んだ見習いさんが馬を外してた。


「ごめん、遅れた?」

「いや、丁度だ。相談あるんだが、四人は無理か?」

「荷物少なかったら行けるよ」

「よかった。じゃあ頼む。砦に見習いと二人だけだとさすがに不安だから、最初だけ四人で行きたかったんだ」

「最初は私も居る気だったよ」

「そこまで甘えるわけにはいかん。魔物を心配せずに砦に運んでもらえるだけで、こっちは大助かりだ」

「それなら私も家作りできるからありがたいね」

「元々そういう話だったろう。今日からよろしく頼む」

「りょうかーい」


みんなで朝食(肉・野菜・玉子サンドだった)食べたら、幌馬車(馬はいないけど)フライト。

うん、幌あった方が、周りが見えにくくて怖く無いかも。

後ろで『おおー、すげー!』とか歓声上がってる。


「ガイ、御者席で怖く無い?」

「もう慣れた。万一落ちても魔法で着地できるし、ジャンプして荷車に戻れるからな」

「順応早いな。ところで、ノーラのことってどうなったの?」

「ああ、こっちの体制は想定以上だぞ。あのくそメイド、俺たちが砦に行ってる間に本性現しやがった。親父に『自分は子爵第二夫人の信頼が厚いからすぐに開放して領都まで送れ』と吐かしたらしい。ノーラの専属のはずが、主人を放って主人でもない第二夫人の下に帰ろうとするなんてありえない。エクムントからヒナタと会った時の様子を聞いて、俺たちと同じことを懸念した親父が、警備付きの監禁を命じてた。俺が帰ってノーラの境遇話したら、マジ切れ寸前だった。だから俺たちの計画を、親父が主導するってよ」

「そっかぁ、うまく行くといいね」

「だな。話は変わるんだが、砦の部屋、今後もヒナタ用に貸し出す許可は貰ったぞ」

「今日の午後にでも、自宅予定地に引っ越そうと思ってるの」

「は?、待て待て。まだ家はできてねえだろうが! どうすんだよ!?」

「仮住まい作った。砦より頑丈なの」

「なんで仮住まいが砦より頑丈なんだよ!? ありえねえわ!」

「岩くり抜いて部屋作ったの。出入口も石扉(石材積んでるだけ)だから、頑丈だよ」

「……普通工事なんかの仮住まいって、テントとかじゃねえのか? 良くて掘っ立て小屋だろ。どっちも魔物圏じゃ使えねえが、岩くり抜くって…」

「いや、建築用の石材欲しくて岩くり抜いたら部屋になるじゃん。今、六部屋あるよ」

「…もう想像もできん。とにかく安全なんだな?」

「うん、頑丈だよ」

「それならいい。だが、食事はちゃんと持ってけよ」

「うん。三食付きのお仕事はありがたいよねぇ。あ、あの樽風呂も持ってっていい?」

「ああ、あそこは本来の水樽置くつもりだから、好きにしてくれ」

「分かった。……ねえ、またお風呂入らないつもり?」

「あのなぁ…。風呂なんざ、貴族屋敷と高級宿にしか無えんだぞ」

「女の子にもてないよ?」

「うっせえ、家帰ったらちゃんと入るわ! 魔物圏の砦で風呂に入ろうとする方が変なんだからな!!」

「そうなんだ。でも、臭いと女の子にもてないのは事実だからね」

「……わかった。気を付ける」


馬鹿話してたら砦到着。

約三名、箱罠見て唖然としてた。

魔獣減ってるから、かかってるのかなり少ないよ?

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