第17話 初遭遇と新たな覚悟
午後からは着弾誘導練習してから魔素感知訓練。
このためにネズ魔用の罠、一匹だけ残してあるんだ。
うん、100mくらい離れても感知できてる。
しかもサイズまで分かるようになってきた。よしよし。
んあ? 城門前の森にもなんか複数反応あるぞ。
え? 昼間っから魔獣来た? 妙に魔素が薄いけど。
いや、この形、人だ! 兵士さん戻って来たのかな? あ、私、砦を不法占拠して食料勝手に食べちゃってる。ど、どうしよう!?
あ、あれ? 森から出てこないで動かなくなった。なんで?
兵士さんとかなら普通に近づいて来るよね?
…ひょっとしてこっちの様子をうかがってる?
なんか嫌な予感するな。
城門扉の罠、扉ロックして様子見よう。
……全然動かないなぁ。
人が砦の近くまで来てるのに森にとどまる状況って何だろう?
仕方ない、裏から迂回して森の上空から近づいてみるか。
大きく迂回して、森の木に隠れながらこっそり近づいてみた。
大人が四人、茂みに隠れて砦方向をうかがってる。
服装は、どう見ても兵士には見えない。
「お頭、物見もいねえし物音ひとつ聞こえやせんぜ。噂どおり無人じゃねえすか?」
「ロブ、城門叩いて助けを呼ぶふりしてみろ」
「じ、冗談じゃねえっす! 俺ら全員似顔絵付きの手配書回ってるんすよ!? 兵がいたら捕まるじゃねえっすか!」
「ち、しかたねえ、城壁に鉤爪かけてこっそり登るぞ」
「「「へい」」」
うわー、友好的接触しようと思ってたのに、相手犯罪者じゃん!
こんなの砦に入れたくないぞ。
森の木々に隠れながらダッシュで城壁内に戻り、城壁の上に身を隠した。
鉤爪が飛んできて城壁の上に引っかかったので、魔法で鉤爪に結ばれたロープを切った。
「ば、馬鹿野郎!鉤爪は一つしかねえんだぞ!!」
「し、知らねえすよ!道具の手入れは捕まったギオの担当っす!」
「今はお前が持ってるだろうが! どうすんだ!? ロブ、てめえ城壁登れ!」
「無茶っす、できるわけねえ! 扉壊して入るっす」
「阿呆! 夜、魔獣が入ってくるだろ!」
「中入ってからなんかで押さえりゃいいっす!」
「ち、しかたねえ」
おー、もめてるもめてる。
でもさ、中に兵士いたら、その大声で気づかれるじゃん。
いつのまにか無人が前提になってて扉壊す気でいるし。
馬鹿なの?
しかし、扉壊されたら城門罠使えなくなるな。
どうしよう……あ、そろそろ夕方だからカラ魔来ないかな?
よし、魔素吸収最大!
「お頭、この扉、ちょっとやそっとじゃ壊せやせんぜ」
「魔物圏近くの砦の城門なら頑丈なのが当たり前だ! ロブ、お前が鉤爪壊したんだ。責任取ってお前が開けろ」
「そ、そんなぁ…」
「頭、やべえ! 魔鳥だ!」
「ち、ジェフ、ゴードン、二人で倒せ!」
「他からも集まって来てやがる、無理ですぜ!」
「やっぱり魔物圏にアジトなんて無茶だ!」
「くそー! しかたねえ、穴倉まで戻るぞ!!」
あ、カラ魔こっちにも来る。
でも、カラ魔って魔鳥って呼ぶんだな。
討伐しちゃうとあいつら戻ってきそうだから、屋敷に逃げ込もう。
それにあいつら穴倉に戻るって言ってた。
なるほど、魔獣からの退避用に穴掘ってあるんだな。
私も穴掘り魔法練習するかな。
…しまった、城門罠ロックしたままだ。
これじゃあ明日の朝一討伐の魔獣がいない。
レベルアップ遠のくの嫌だから、元に戻しに行こう。
魔素感知を全開にしつつ外に出た。
カラ魔一匹城門の上に止まってるのは分かってるもんね。
あ、飛んで来た。
サクッと討伐して城門罠を稼働状態にした。
もう夕方だから今日は終わりにしよう。
変なの来てなんか疲れたし。
屋敷に戻ってしばし黙考。
さっきは慌てててあんな対応しちゃったけど、奴ら、夜までに穴倉にたどり着けるのかな?
ちょっと気になったので、手配書探してみた。
ベッドが並んだ兵舎の壁に、手配書っぽいのいっぱい貼ってあったはず。
あいつらの手配書見つけたよ。
特徴似てるし名前も合ってたから間違いなさそう。
元は他領の十二人の盗賊団みたい。
さっきも仲間が捕まったようなこと言ってたから、アジトがばれて逃げてきたのかな?
罪状:殺人、傷害、強盗、強姦、窃盗、恐喝、誘拐……うん、死んでくれた方が世のためだな。
でも、よく考えてみるとこの世界って封建社会だった。
強盗騎士やフェーデとかも知識として焼き付けられてるってことは、武力行使上等の世界か…。
私、身分や腕力を笠に着て理不尽な要求する奴って大嫌いなんだよな。絶対反抗しちゃうよ。
封建社会で、身分が上だから下には何してもいいなんて勘違いしてる奴らから理不尽なこと要求されたら……。
うん、覚悟を決めとこう。
私はこの世界に来ることを承諾していない。
なのにこの世界のルールに従え? 冗談にもならん!
たとえ相手が魔物じゃなくても、理不尽なことするやつは魔物と同じ対応してやる。
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