第3話 生きるために足掻こう

……幼女用の衣服なんて、砦にあるわけ無いよね! 知ってたけど!!

男物のショートチュニックだけでロングワンピースだよ。

肩幅ガバガバでずり落ちて来るよ、ちくせう!


…はぁ、お腹空いた。

この身体、多分できてから一度も食事してないよね。さっきのマーライオンも胃液だけだったし。

よし、食料庫でなんか漁ろう。


階段の段差でけえよ!

手足使って必死に地下まで降りたけど、この身体には階段降りるだけで重労働だよ!


…棚、高いよ。

木箱を踏み台に……木箱重っ。

はぁはぁ、やっとビスケットって書かれた箱取れた。

ビスケット? いやこれ、固焼きのショートブレッドだろ。


硬い……。めっちゃ硬くて、幼女の歯じゃ文字通り歯が立たないよ!

命名、お前はカチカチ棒だ。

…齧るの無理だから、水でふやかすか。


おぅ、上り階段が絶壁に見えるぜ。

これ登るのかぁ…。


……やっとの思いで井戸に着いたけど、つるべ重すぎて井戸水汲めないんだけど!?

どうすんのこれ? 水無しじゃ数日しか生きられないよ!?

食料庫にワインあったけど、幼女の肝臓にアルコール分解酵素なんて期待する方がおかしいわ!


あ、魔法で水出せるんだった。

人が使う魔法は規模が小さいけど、変質魔素は発生しないらしい。

いかんな。後付けの知識、単なる知識だから行動に結び付かないよ。


お水出て~。

……先に入れ物探せよ私。


…コップまで重い。

これ、素焼きの陶器みたい。しかもでかいし。


……硬い、しょっぱい、ボソボソする、まずい。

ショートブレッドもどき食べるだけでこの苦労。

幼女の身体、不便すぎるぞ。こんなんでほんとに生きていけるんだろうか?


……あ、まただ。魔法で物を動かせるんだった。ちゃんと使えよ幼女(私)!

こんな幼女お一人様な状況、知識総動員しないと生きていけないぞ。

ここは日本じゃなくて超危険地帯なんだから、ちゃんと植え付けられた知識活用しないと、すぐに詰んじゃう。

よし、サバイバル生活なんだと考えて行動しよう。

とりあえず生活環境整えるか。


自分の部屋を決めて、砦内で目に付いた生活用品持ち込んだ。

でも、執務室みたいなとこにあった自立した柱時計までは、重くて持ってこれなかったよ。魔法でも動かせなかったし。


しかも…。

ベッドくちゃい、毛布くちゃい、シーツもくちゃい。

…汚しちゃった服も洗濯したかったから、根性入れて洗濯した。

洗濯、足踏み洗いしちゃった。

だって洗濯機なんて無いから、桶で手洗いなんだよ。

幼女ボディの手洗いじゃ汚れ落ちないって!


洗濯物干すのすらしんどい!

せっかく洗ったのに、地面引きずりそうだよ!

洗濯物干し終わったら、すでに夕方になってた。


洗濯だけでへとへとになったので、夕食はまた水でふやかしたショートブレッドもどき、いやカチカチ棒。

食べてたら外がどんどん暗くなってきたので、慌ててオイルランタン灯したよ。


夕方に干した毛布が乾くはずもなく、その日は長椅子に寝転んで眠った。


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