第18話:共闘
「協力するべきだ!手段を選んでいる場合じゃない」
テロ開始の時間が迫っている事に焦っていたガランは、藁にもすがる思いで訴える。
「でも…いや…そうね…」
「いいな?意志を示すぞ」
半ば押し切る様にガランは協力を決めた。返事についてだが、本来別の人間がイージスペリカンのコックピットにいる為、声で返すと怪しまれてしまうと考え、ガランは剣を掲げて協力の意思をタートルへ示した。すぐに通信が入り、
『射撃と同時に私を守ってくれれば良い』
そう言うと未だヒトガタ形態では無いタートルは、ミサイルを発射、それは扇状に広がり、フィッシュを囲む様に飛んでいく。
「愚かだな。この程度」
フィッシュは迎撃しようと複数の機銃を全方位に向ける。
「な!?」
が、その時、ミサイルからさらに小型のミサイルが射出され、糸目のない弾幕がフィッシュを襲った。フィッシュは必死に迎撃しそのほとんどを退けたが一部が着弾し装甲を持っていく。
「良かろう、お前から堕としてやる!」
虚をつかれ、怒り心頭のフィッシュは機雷を操作し、タートルが逃げられないように囲い込もうとした。
「そうはさせるか!」
そこへペリカンが割り込み、盾を構える。すると盾が展開し、球状の見えない壁を作り出した。
「何これ」
「これぞ!イージスペリカンの奥の手、電磁フィールド!展開して弾をそらせるのさ!」
機雷が近づくもそれて爆発し、破片でさえも2機へ到達する事ができない様だった。
「でもこれなんで使わなかったの?」
「これはレースバランスの為や電力を使うから一時的にパワーダウンしてしまう。それに回数制限あるし、短い時間しか使えない。つまり…今の状況ヤバい!」
次々に近づいてくる機雷、今は防げているが、スクリーン端の兵装についての表示によるとあと10秒も持たない。
「そのまま2機とも墜ち…ろ?」
高みの見物をしていたフィッシュの装甲に突然大きな亀裂が入る。それはまるで剣で切った時のような綺麗な切り口だった。
「ヘイ!ポイントプリーズ!」
フィッシュ正面に、立っていたのはソードアリゲーターだった。
「へ!油断はしてるからだ!ソードアリゲーターは最初バトルエリアで大破損してるから撃破ポイントが欲しんだよ。それにお前が機雷でソードアリゲーターから守ってくれたしな」
タートルとペリカンはフィッシュとアリゲーターが争っている間に機雷原を抜けた。
現在の順位はイージスペリカン、ソードアリゲーター、シェルタートル、d.フィッシュであった。4機は互いへ牽制しながら最後のスピードエリアに向かう。
そして、スピードエリアに入る直前、ほぼ同時にアリゲーターとフィッシュが全ての装甲をパージした。装甲が外れた姿は差異が見られるもののフォーマットは同じ、これがスカイルーラーの"本体"である。
まだ装甲を外さないいペリカンとタートルを追い越し、その2機が先頭に躍り出る。
ここで確認しておくが、彼らの目的はレースでの勝利では無い。ガランの幼馴染でトーカの生みの親であるヒナを、テロに巻き込まれないように回避する事である。彼らはスカイルーラーを強奪し、レースコースを通る事がパーチに向かう最短ルートだと知ってレースに出た。そしてその最短ルートでは、そろそろレースを抜け出す必要がある。
「ドローンをハッキングするよ」
「了解!」
レースである以上事故がある、その時スカイルーラーがそれ以上破損しない様にしたり、コースから大きく外れた時に強制的修正するドローンがコースに沿って配置されていた。それをどうにかしなければ、レースを抜け出す事はできない。
「…え?…え?」
「どうした?」
ハッキングしているトーカは戸惑いの声を上げていた。
「先に何者かにシステムが上書きされてる。それも、一ヶ所だけ抜けられる様に。いったい誰が…」
「好都合じゃねえか。時間もねぇ!そこを通るぞ!」
ガランはコースを外れている事を示す警告を無視して、レースコースから大きく外れ、空中空港パーチに向けて飛び始める。
「間に合ってくれよ」
岩柱地帯を抜け、もう障害物は無い。ガランが機体の速度を上げようとスロットルに手をかけた時、
「ガラン左上!!」
「なんだよ。って!?」
左を見上げると、そこには本来ならレース中のはずのシェルタートルが、隣を飛んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます