第17話:人型

 二つ目のバトルエリアに全機が到達しようとしていた。広がる風景はスピードエリアと変わらず岩柱の森であり、特有の風が吹いている。


「ガラン、このままじゃ、装甲薄いところ確実に狙われるよ」


 前のバトルエリアで、目眩しに装甲を一部切り離したため、今現在、イージスペリカンには完全鉄壁の防御型にあるまじき装甲の薄い明確な"弱点"が複数存在していた。


「ああ、わかってる。今のままならな。それなら盾を構えりゃいい」


 構える、確かにイージスペリカンには積層式の大きな盾が機体の上部に多い被さるように設置され、それはある程度は可動するため、多少はカバーできるであろう。しかし、それで構えるといえるだろうか?


「ヒトガタ形態に移行する」


 ガランがとあるレーバを操作すると、たちまち全身の装甲が開き、パーツの位置が変わり、機体のシルエットが変化していく。


 ここまでイージスペリカンは名前通り鳥、あるいは航空機と類似した姿だったが、直立した人特有の形状に成っていく。そして当然人の為、手を備え、機体上部の背面の大盾を正面に構える。そして、盾の中から一振りの鉄を長方形に切り出したような片刃の大剣を取り出した。


「さあどこからでもかかってこい!」

「ヘイ!ボーイ!」


 構えたガランに呼応する様に、後方から高速で人影が飛来する。


「来ると思った!」


 人影とイージスペリカンの間で剣を介して激しい閃光が生まれた。その人影とはソードアリゲーターのヒトガタ形態、イージスペリカンとはまた違う形状の剣、青く光る両刃の西洋剣を両手に持っていた。


 2機は岩柱の間を縫う様に飛びながら激しく剣を交える。最新技術の結晶であるスカイルーラーでありながら、その戦いは飛ぶという点を除けばあまりにも原始的なものであった。


 ガランが岩柱に回り込み、陰から大きく振りかぶり、振り下ろす。その剣先がソードアリゲーターをかすめる。怯んだアリゲーターが後方に流れていくかと思いきや、


「スキありぃ!」


 まるでガンマンが拳銃をホルスターから抜くように腰を捻りながらレールガンをイージスペリカンへ向け放ったが、


「これもあるんだぜ?」


 イージスペリカンは大剣を持つ手と反対の大盾を正面に構えそれを防いだ。


「ご苦労」


 激しい攻防をみせる2機の横を何かが通り過ぎた。

 そして、2機の前で閃光と共に電撃暴れ始めた。

 ヒトガタ形態になったフィッシュが前を行き、2機の方へ向けて電撃を帯びた機雷をばら撒き、機雷原が敷いていた。


「クソ!多すぎる!」

「ガラン!また秘匿回線!」

『協力しましょ、これ以上の損害は"作戦"に支障が出る』


 前のバトルエリア以来のタートルからの通信だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る