第15話:岩柱
2つの目レースエリア、そこには森の木々のような何十メートルもの岩の柱が立ち並んでいた。
「さぁ!やってまいりました!この都市でのレースの目玉!この地域特有の地形、岩柱の密林地帯です!どうなるんですかね、ワタナベさん!」
「今回、参加する選手達は初めてこのコースを飛びます。選手達がどう切り抜けるか楽しみです!」
「タートルめ!バカみたいにミサイル撃ちやがって。まぁだいぶ装甲を削ったが」
そう口にしたのはdジェルフィッシュのパイロットだった。正面スクリーンの端には最初の岩のような姿から、一回り二回りも小さくなったシェルタートルが映っており、心なしかフラついていた。やがて端の方からも消え、dジェルフィッシュがスカイルーラーの中で最初に岩柱地帯に入る
「"本体"へのダメージは微小、慎重に行けば問題ない」
手元のコンソールを素早く叩くと、クラゲの形をした機体の傘のような部分が閉じられその下から伸びていた、触手部分が纏まり、機体が一回り小さくなった。スロットルを絞り、傘部分や脚にある小型のスラスターで横へ滑るように避けながら岩柱地帯を進んでいく。
「次のバトルエリアに先に入れれば俺の勝ちは堅いな」
早くも勝利を口にした彼の機体の横を、何かが高速で駆け抜けていった。
「なっ!?あの速度で飛ぶとか正気じゃねえ!岩柱にぶつかるぞ!?」
そのシルエットはまるで鳥が翼を窄めているようだった。それはガラン達の駆るイージスペリカン。最初の障害物のないスピードエリアの時と遜色ない速度で岩柱を駆け抜けて行く。
「あの速度では岩柱をうまく避けられないはず、いったいどうなってるんだ?」
後を追うようにイージスペリカンの通ったルートを行くと、時折機体を押されるような感覚を覚えた。
「岩柱間で独特の気流が流れているのか。奴はこれを」
dジェルフィッシュのパイロットの推測は正しかった。岩柱では独特の風の流れが生み出されており、この地域に住んでいるガランはこの地形を何度も飛んでいた為、風の流れを読むことができた。そして利用する事で速度を落とさず飛び抜ける事ができていた。
「なるほどな。ありがたい」
うまく風を掴んだガランだがある意味、道を開いてしまった。dジェルフィッシュはガランの通ったコースをなぞる様に飛びはじめた。
「チッ!やっぱり追いついてきたか」
この岩柱に慣れているのはガランにとって大きなアドバンテージであったが、自身専用に調整された機体、プロで生き抜いて行く腕、総合的に見てdジェルフィッシュのパイロットの方が上だった。二機の距離は徐々に縮まって行く。
そしてスピードエリアを抜ける頃にはdジェルフィッシュが先をいっていた。
「お先に!つーか、ペリカンのパイロット、あいつこんな飛び方だったか?」
次のバトルエリア目前ではdジェルフィッシュ、イージスペリカン、ソードアリゲーター、シェルタートルの順番であった。
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