第14話:背後
『いくよ』
バトルエリアに入った瞬間に突然、秘匿回線でシェルタートルのパイロットから合図が来た。
「何これ、自動で音声記録がすぐに削除されてる。それに行くってどこに」
「トーカこっちからの音声は繋がって無いんだよな?」
「当たり前でしょ?バレるじゃない」
「ならどうして」
ガランは眉をひそめる。そしてハッとし、
「バトルエリアに入ったタートルがする事は! トーカ!"イージス"を起動しろ!」
「イージスって…」
「そんな名前の防御ユニットがあるだろ?」
「あっ!これね!」
トップでバトルエリアに入っシェルタートルの外観は一言えばゴツゴツした岩であった。そこに亀裂が入り所狭しと並んだミサイル群が顔をだす。
空を埋め尽くす大量のミサイルが各機体に向けて飛んでいく。
タートルのすぐ後ろのソードアリゲーターは機体を右に左に機動しミサイルを躱していくが、あまりの多さに回避しきれず、被弾し体勢を崩し後方にながれていく。
d.ジェルフィッシュはクラゲのような傘の下から伸びた複数の機銃で迎撃、多少撃ち漏らしたものの被害は最小限でとどめられた。
ガランたちはイージスという迎撃システムを起動した。それはペリカン表面に張り付くように装備されていた浮遊する機銃搭載の小型の盾。自動で、ある時は機銃でミサイルを撃ち落とし、ある時は盾で受けて守っていた。いくつかの盾が破壊されながらも機体を防ぎきった。
「へぇこんな機能が…なんで知ってんのよ」
「スカイルーラー好きなめんなよ」
「なんかうざい」
煙を上げたソードアリゲーターが横を通り過ぎていく。
前方ではシェルタートルとd.ジェルフィッシュが激しい戦いを始めた。
「時間的にはまだ大丈夫、無理に攻め込まなくても――」
機体に大きな衝撃。警告音が鳴り響く。
「後ろ!」
イージスペリカンの後ろの影に重なるは後方に流れていたはずのソードアリゲーター。細長い機体、その前方が上下に分かれその間から稲妻を宿した砲身が迫り出していた。
「あれはレールガンだ!」
ガランは記憶から機体情報を引っ張り出して叫ぶ。
『ヘイヘイヘイ!タートルとお前できてるってうわさだぜ?協力されちゃまずいし、撃墜されたフリはだるかったぜぇ』
通信からは陽気な声が聞こえて来た。アリゲーターのパイロットだ。
砲身が閃光をあげながら続けざまに弾丸を射出する。イージスが砲身の方向から予想して防ごうとするが、複数枚に盾が重なったとしてもいとも簡単に貫かれてしまう。機体を覆う装甲が砕け、千切れて空にばら撒かれる。
「トーカ!背面の積層シールドを展開してくれ!」
「わかった」
イージスでは防げないと判断したガランはトーカに指示して機体背面の大部分を覆う盾で防ごうとする。しかし、それでも僅な装甲の隙間や部品の接合部を正確に狙われ、崩されていく。
「引き剥がさないと」
「わかってる」
不規則に機体を動かすが、それでも正確に撃ち抜いてくる。一際大きな衝撃、スクリーンに騒々しい音と共に警告が表示される
「まずい!一部装甲を抜けて"本体"に当たってる!本体は"障壁"があるから抜ける事は無いけど、このまま撃たれると"撃破"判定になって失格になる!」
「何それ!?」
(手応えがないなぁ…不調かぁ?まぁこっちには好都合!)
ソードアリゲーターのパイロットは余裕の笑みを浮かべていた。
「思ったより損傷激しいみたいだなぁ、破片にぶつかるのはおよしよ」
前方、イージスペリカンからくる破片を避ける。破片の中にはかなり大きなものがあった。
(流石に多すぎでは!?)
破片の数があまりにも多かった。正面が見なくなるほどに、
「おぅ?まさか!自ら装甲をパージして…」
ソードアリゲーターのパイロットが気づいた時にはもう遅かった。
「もらったぁ!」
破片に紛れてイージスペリカンがもうすでに接近していた。
ガランの叫びと共にイージスペリカンの下に伸びた2本の棒が、まさに鳥の脚のように可動し、先端の爪をソードアリゲーターに突き立てる。火花を散らしながら食い込み装甲を突き破る。
絡み合う2機は横に激しく錐揉み回転している。
「離れろよぉ!」
アリゲーターの上部から機銃が飛び出しペリカンへ向けて撃つが、
「その装備はファンブックに載ってんだよ!」
イージスを展開して防ぎ、撃ち返して破壊する。
「このまま!ってあれ!」
ペリカンが取りついていたはずのアリゲーターが離れていく。
「こっちも身を切らなきゃなぁ!」
アリゲーターも自ら装甲をパージしていた。
そして、側面から新たな翼が生えてきて正面部分が青く輝き始める。
「やばい!あれは!くそっ!装甲が絡まって」
深く突き刺さったアリゲーターの装甲から足が抜けず、体勢を立て直せないイージスペリカン。
そのイージスペリカンめがけてアリゲーターが翼を当てようと急接近した時、2機は空中のホログラムの青いラインを越えた。
「スピードエリアに入りました。すぐに戦闘を中止しレースを続行してください」
アナウンスが流れ、自動的に全ての兵装がロックされた。
『ケッ命拾いしたな』
そう吐き捨ててアリゲーターは通り過ぎていった。
「「危なかったぁ」」
ガランとトーカは声を合わせて安堵の声を漏らした。
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