第11話:作戦
雲一つない空の下、ガランは絶望に打ちひしがれていた。
警察、空港、頼みの綱だった大人達は、ガラン達の言葉を子供の戯言だと聞き入れようとはしなかった。市民IDを持たぬ、力を持たない子どものガランには、もうテロの発生を訴える方法は無かった。彼は空をボーと見上げていた。その間も時計の針は傾き続け、テロ開始の時は着実に迫っている。
「チクショウ!どうすれば…」
『今年のスカイルーラーも都市からスタートし荒野のコース回るいつものレースコースだ!そして、今日空を駆けるパイロットは――』
ガランは派手な音楽に、抑揚の大きい声の方を見た。道沿いの広告ディスプレイには、今日この都市で行われるスカイルーラーのエキシビジョンレースの参加者やその機体が派手な演出と共に映し出されていた。
それを目にした途端、ガランの目に光が生まれた。
「これだぁ!!」
「へっ!?」
隣でガランに声をかけあぐねていたトーカは驚いて、思わず道端のゴミ箱に盛大にぶつかった。
整備士達が忙しくとある機体の周りで作業をしている。
その機体の全長は25メートルほどで、機体色は白で青みの強い紫が所々があった。そして特徴的な大きな翼を備えているが航空機にしてはいささか歪な形をしており、言うなれば鳥の翼のようであった。また、ボディから下へ棒状のものが2本、左右対称に伸び、生き物の足、さらに言うとこれもまた鳥ように見えた。
「そろそろ1人になりたいんだけど?」
機体の中から声色の柔らかい男の声が聞こえる。
「すみません、例の装備調整に手間取ってしまって。今終わりましたので撤退します」
「そうか、ご苦労様」
整備士達が機材を持って足早に履けていく。
男はコックピットの中で、
「ルーティンはやっとかないとな」
男はどこからかともなくストップウォッチを取り出し、
「13秒」
そう呟いて目を閉じてタイマーをスタートさせる。しばらくの静寂のあと、カチッという小さな音。ストップウォッチはコンマのずれもなく13秒を表示していた。
「完璧なタイミングが完全な勝利をもたらす。あなたが望む世界を作る為に。…うん?」
男が独り呟いていると、警告音が鳴り、ゆっくりとコックピットハッチが開いていく。
「いったい誰が、うっ」
男は突然、顔にガスが吹きかけられる。ガスを吹きかけたのはライダーヘルメットを被った者。男は気を失い、コックピット内で倒れ込んだ。
ライダーヘルメットは男を引き摺り出し、近くのロッカーの中に収めた。
そして今度はライダーヘルメットがコックピットに座り、
「自分が言い出したとはいえ、こうもうまくいくとは」
ライダーヘルメットはパネルをタッチしコックピットが閉じるとヘルメットを外す。するとそこにはガランの姿があった。
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