第8話:無力
「ヒナ様がやばいってどういうことなのよ!?」
「その前に確認だ。ヒナが"空中空港パーチ"に着くのはいつだ?そして"空"に上がるのは?」
「ええッと、パーチに着くのは10時、そこから"空"に上がるのは12時よ!ってパーチで何か起きるの!?」
ガランは頭を抱えて、ああと短く返事をした。
「俺はフォックスの端末で見たんだ…"空"を目の敵にしてるテロリスト"サーバル"が11時にパーチを墜とすって計画を!」
「墜とすって…パーチとか空中空港は"空"と"地上"を繋ぐ数少ない拠点よ!自衛能力は高いし、それにあの施設のコア部分は都市の軍隊でも破壊できない技術の塊、墜とすなんて不可能よ!それに――」
「そんな事は分かってるさ!でも都市の門のセキュリティや警備も並大抵じゃない!門を襲撃すること自体不可能なんだぞ!サーバルはそれをやり遂げてる!何をするか何ができるか分からない!」
「門の襲撃って何の話?」
「き、聞いてないのかラジオでやってたぞ。それより、何か手を考えないと!」
トーカは右へ左へと部屋をうろつき始めた。
「そ、そうよ!ま、まずは警察よ!都市の警察に連絡しましょう!」
数十分後
二人の間の空気は澱んでいた。
「相手にしてくれなかったね…」
「なんだよ!悪戯電話するなって!こっちはマジなのに!」
「口頭だけじゃ説得力が…何か証拠はないの?ガラン」
ガランはハッとしてバッグを漁り、一つの端末を取り出した。
「フォックスの端末だ、この中に計画の一部がはいってる!」
彼はトーカにそれを渡した。トーカは手からケーブルを伸ばして端末に接続する。情報が次々と流れ込んでくる。
「あのバカ、サーバルのサーバにハッキングしたのね。しかも今日じゃない。ええっと『空中空港をヒトガタで襲撃。制圧、抵抗勢力が無くなったところでNo.0でコアを破壊しパーチを撃墜する』…本当に堕とす気なのね…これを届けに行かないと、警察だと取り調べで時間を食いそうね…空中空港に直接伝えに――」
「でも都市に入る方法がない…空中空港へのアクセスは限られてる。ここら辺だと都市の空港しかない」
ガランは深くため息をついて項垂れてた。空中空港へ連絡をするには都市内の空港に行く必要がある。つまり都市の門のセキュリティをパスする必要があるのだ。ガランにその術はない。
さっそく行き詰まり頭を抱えるガランを横目にトーカは指を近づけたり離したりしながら、
「ない…ことは無いんだけど…」
「本当か!?あるのか!?」
「で、でも…問題があるの…もう都市に入れなくなる。偽造IDを一時的には私の技術で作れる。けどこれはたった1日だけ効力。その後はセキュリティに引っかかってばれてしまう。顔とかの生体データが残る、同じ手は使えない。ガランがスカイルーラー目指してるのは知ってる…近くに他の都市はない、夢へのチャンスが無くなって――」
「かまわない!それでいこう!」
「本当にいいの?」
「ヒナと喧嘩したままで終わりなんて…死んでも嫌だからな!」
ガランは何の躊躇もなく笑顔でそう言った。
「分かったわ…すぐ準備する!」
"都市"それは荒野の中の唯一のオアシス、戦前の営みを保存した箱庭。そこには平和を体現したように道ゆく人々が笑みを浮かべている、そんな世界が広がっていた。楽園というのにふさわしかった。
都市内に入ったガランその風景に目もくれず、ヒナを助ける為に一直線に空港に向かった。
「ねえ君たちふざけてる?」
「だからマジなんだって!空中空港にサーバルが!」
「門の襲撃から多いんだよねー。サーバル関連の迷惑な奴らが」
「これを見てくれよ!」
ガランが出したのはフォックスの端末、そこに記されていたのはサーバルの空中空港パーチ襲撃の計画の一部。
「よくこんなのまで用意したね、関心したよ。よく出来てる」
「そんなわけないだろ!」
「今日はスカイルーラーで忙しいんだよ。これ以上邪魔しないでくれ。それに…」
ガランの顔を覗き込む、
「君、都市の外の人だろ?俺はここで勤めて長い、ここは色んな人が来るんだ。外の犯罪者とかもね。君たちがどうやって入ったかは知らないけど、このまま続けるなら警察呼ぶよ?」
「だから――」
「ガランもういこう」
トーカが袖を引っ張り、引き寄せ小声で
「警察に捕まればヒナ様を助けられなくなる」
「わ、分かったよ…」
渋々その場から離れた。忙しなく流れる人の波の中、2人は力無く歩き、外へ出た。
ガランは眩しさに目を細めた。見上げた空は雲一つなく、澄み切っていた。
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