第7話:危険
「ひぃぃぃ!」
ガラスを引っ掻いたような悲鳴が辺りに響く。荒野に倒れ込むヒトガタとそれを見下ろすまた別のヒトガタ、そして同じ構図の2つの人影。
「命だけは!」
頬を腫らしながら懇願する小男フォックス。フォックスが骨董品レベルの旧式のヒトガタに乗っていたせいであろう、ガランはすぐにフォックスに追いついた。そして、レースで磨き上げられているガランの操縦から逃げ切れる訳もなく、簡単に取り押さえられる。
「うるせえフォックス!そんなのじゃ足しにならなねえよ。よっと」
ガランは振り上げた拳を下げ、フォックスのヒトガタのコックピット後方、貨物に飛び乗り物色し始めた。
「いいさ持って行けよ!都市の門をサーバルが襲撃したせいで、警察が入って俺が偽造IDに関わってるってわかっちまった。もう都市の近くで商売できねえ!もうどうにでもなれ!」
やけくそになっているフォックスは、地面に大の字になって倒れ込んでいた。それを気にする様子もなく、ガランはしばらく貨物を漁っていたが、
「なんだよガラクタばかりじゃねえか!」
出てくるのは骨董品ばかり、しかしそれは売ればかなりの額がつくのだが、そのようなものの出回らない都市外で生きてきたガランが、その価値を知るよしも無い。
「おっよさそうなのがあるじゃん」
骨董品の山の中で鈍い輝きを放つものがあった。それは一般的な携帯端末に比べ厚みがあり、より頑丈そうなものであった。ガランはそれを拾い上げボタンやスイッチを動かしてみるが反応が皆無だった。
(バカめ!そいつは俺の仕事の道具。簡単には起動するか!情報屋のセキュリティなめんなよ)
フォックスがそんな事を考えている中、ガランはテイコウから板状の端末を持ってきた。その端末からコードを伸ばしフォックスの端末に接続し、しばらく操作すると、軽い音がしてフォックスの端末が起動し始める。
「嘘だろ!?」
フォックスは目を見開いて驚いている。
(ああ!昨日の事を思い出しちまう…こんな事を教えてくれたのはヒナだもんな)
ガランの方は顔をしかめ天を仰いでいた。
「はぁ…使えるものはねぇかな」
端末の中身を調べていく中で、
「ん?」
ガランは手を止めフォックスの方を向く。
「おい嘘だろ!フォックス!どういうことだ!?」
「おい!トーカ!」
皿を片付けるトーカの背中に大声。見ると、いつのまにか帰って来ていたガランが玄関にいた。
「ふん!」
トーカは無視をするが、ガランに肩を掴まれ正面を向かされる。その時のガランの形相は凄まじいものだった
「ど、どうしたのよ」
「ヒナが、ヒナが危ないんだよ!」
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