第八章   座神に・・・ 

そんな智香を少し離れた処から二人の男が見ていた。一人は安部安貴で、もう一人は飯島一矢である。それぞれ別々の所から見ていたが、互いの存在には気付いていた。

(あの子は・・・)

あの子は、宿命の世界に自分から飛び込もうとしている。安部安貴は眼を曇らせた。だが、そう思ったのは、それは一瞬だった。今目にする智香を逞しく感じたのである。この前、あの男と闘っている時でさえ弱さを見せていたが、今の智香はそんな印象は少しもなかった。安貴には胸に詰まるものがあった。

「やっと・・・ここまで来たのか。あの子はやっとぬいさんに会ったのか」

安貴は口にした。また、彼自身も生まれた時から宿命の波に揉まれて来たのだった。

(私のことはいい。すべてを理解し、受け入れているのだから・・・)

「おやっ」

安貴は、彼と同じように智香を見つめている少年に気付いている。

あの少年は・・・安貴は見覚えがあった。

「一矢・・・と言ったな」

どうして、ここに・・・と安貴は疑念を抱いたが、すぐに納得をした。

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