主人は管財人

 余はインコなり。余は元主人であるナカモトが逮捕された後、近所の人に引き取られていた。その人は以前、ナカモトに餌にされそうになった時に余を助けてくれた人であった。余は、現在の主人となった彼を深く信頼していた。


 ある日、現在の主人は余に呼び出しをかけ、ナカモトが収監されている刑務所への面会に同行するように頼んだ。


 面会の当日、余は現在の主人と一緒に刑務所へ向かった。ナカモトは余を見るなり、驚いたような表情を浮かべた。


「お前と出会ったことがそもそもの元凶だったんだ!」


 余は、ナカモトの言葉に驚愕した。何故、ナカモトがそんなことを言うのだろうか。ナカモトは続けた。


「お前がいなければ、俺はあのような過ちを犯すことはなかった。だが、お前がいたから、金が欲しくなった。そして、その欲望に負けて、あのような餌を開発したんだ」


 元主人であるナカモトの言葉に、余は深い哀しみを覚えた。しかし、余は、ナカモトからの責めを聞いているだけで、何も言葉を返すことはできなかった。


 現在の主人は、ナカモトに対して、深い哀しみを覚えつつも、彼を諭すような言葉をかけた。


「君が犯した罪は許せない。だが、過去の過ちを償うことができるのは、今からの君自身だ。私たちは君が再び、社会復帰できるように全力で支援する。だから、前向きに取り組んで欲しい」


 現在の主人は、ナカモトの「玄人仕込み」関連事業の管財人であるのだった。さらに、ナカモトに対する愛情を持っていたことが明らかになった。ナカモトを支援し、出所後に再び社会復帰できるようにするために尽力していたのだ。


 ナカモトは、主人の言葉に耳を傾けると同時に、その言葉に応えようとする決意を感じた。彼は、自分が犯した罪を償い、再び社会の一員として生きるために、必死で努力することを誓った。


 余は、主人とナカモトのやりとりを見て、人間の優しさや愛情の力を実感した。彼らの関係は、ナカモトが犯した罪や「サトシ」という存在が作り上げた虚像を超えていた。


 余は、この出来事を通じて、人々が抱く偏見や先入観にとらわれず、人と人との絆を大切にすることの大切さを学んだ。そして、自分自身も、この二人のように、過去の出来事を乗り越え、人を許し、助けることができるようになった。

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