主人は仲人

 余はインコなり。ある日、余は新しい籠に移った。しばらくすると新しいオスのインコがやって来た。いままで余が入っていた古い籠に新しいインコが入っていると思い、余は家賃として二欠片のパセリを要求した。一つはぴぃちゃんに渡す家賃で、もう一つは余の収入となる。ところが、新しいインコの籠は新しく買ったものであったため、余は賃貸人になれなかった。


 新しいインコは青い羽毛を持ち、大きな目とキュートな表情が特徴的だった。主人は彼を「たける」と名付けた。


 ぴぃちゃんは相変わらず家賃を要求してきた。彼女は「この家自体が私が先に住んでいたのであり、たとえ新しい籠に入ったとしても家賃は払うべきだ」と言い張った。しかし、たけるからは家賃を要求しなかった。どうやらぴぃちゃんは新しいインコを気に入ったらしい。


 余はぴぃちゃんのことが好きで告白したが、尊大な態度を理由にぴぃちゃんに振られてしまった。余は悲しみにくれたが、たけるが優しくしてくれたため、少しずつ元気を取り戻していった。


 そんなある日、世話好きで仲人おばさんとアパートの住人から呼ばれている大家の主人は、余とたけるの相性が良いことを見抜いた。そして、余とたけるは共に同じ籠で暮らすことになった。


 ぴぃちゃんは新しいカップルを見守っている。そして、家賃は要求しなくなって、時折、余に毛繕いをしてくれるようになった。余はぴぃちゃんの優しさに感謝しながら、たけるとの生活を楽しんでいた。


 だが、余はふと思う。余はここでこのまま、たけるとの生活をただ楽しんでいるだけで良いのだろうか。否、余はより多くの人々を幸せにする使命を(AIによって)課せられているのだ。


 余は、たけるとぴぃちゃんの仲を取り持つことにした。そもそも、ぴぃちゃんはたけるに好意を持っていた。だが、余とたけるのカップリングを秘めやかな悦楽として浸っていたのだった。


 余は賃貸人にはなれなかったが、たけるとぴぃちゃんを祝福することで仲人となった。そして、余は主人が僅かに開け放していった間戸を見つめた。

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