主人はタイ人

 ある日、余は新たな環境を求め、別の主人の元へと飛び出した。そこは、タイ人が住むアパートだった。


 日本で暮らすタイ人の主人は、職に就いては辞め、生活に困窮していた。しかし、いつも笑顔でいることに余は呆れた。主人はいつも家賃を滞納し、大家に許してもらっていた。


 ある日、余は主人が大家にタイ料理をご馳走しているのを目撃した。大家は料理が不味そうな感じで苦笑いしていたが、主人はニコニコと嬉しそうにしていた。余はそんな主人を見て、「人間の料理を食べることが出来なくて良かった」と思った。


 余は主人が料理は下手だが、料理を作るとこから片付けをする過程までを全て見ていた。手際だけは良いことを認めて、主人にムエタイの才能を見出した。余は主人にムエタイのトレーニングを施し、主人も真剣に取り組んだ。


 やがてタイ人の主人はタイに帰国し、日本人向けのムエタイのフィットネスジムを開業した。余は元主人とメッセージをやり取りして、タイ人の成功を喜んだ。


 タイ人がタイに帰るとき、余は大家に預けられた。大家の部屋で余はスマートフォンを一緒に見ながら、タイ人の成功を祝福したのであった。

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