第20話 健常者のふり

五年近く作業所に通い、訓練を受けた。

健常者に混じって働くためだ。

SST、職業訓練。パソコン操作。

これに何の意味があるのだろうか。

中には訓練の結果、就職に結びついた人もいるだろう。

しかし、半数くらいだろうか。多くはないが

訓練からこぼれ落ちてしまう。

しかも、訓練して就職に結びつける施設なので

辞める人間にはとことん冷たい。

利用者も薄々気づいているだろうが

職員と利用者も人間同士なので好き嫌いが分かれる。

公の職業訓練施設でありながら公平であるわけでもない。

利用者が割り切ると職員に冷たくされるが

職員は割り切ってもわからない程対人能力が高い。

職員が障がい者のことをどう思っているのだろう。

障がい者を訓練して就職してもらい

毎朝の通勤を車で行い

健常者の森の中に入ることを正解にしているのではないか。

作業所の正義と利用者の熱の冷め方には外部からは

分からないようにしてある、

しかし、いくら考えて、頭の中で分かっていても

現状はなかなか変わらない。

むしろ、障がい者の働く幻想を消し

現実に帰す場所であるのかもしれない。

もちろん、現実を目の当たりにする。

なお、就職してからの現実を知っている障がい者ほど

職業訓練が苦しくなるのではないか。

中には最低賃金を受け取る場所と割り切る40代以上の利用者もいる。

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統合失調症闘病記 手紙の裏 @Longletter

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