第13話 同類?

さてさて遠くには数十万の魔物の軍勢―?


これを殲滅するとなると…それこそとんでもない一撃が必要になるねー。


…取り敢えず、今までのて適当な起源魔法の使い方ではなくてー。


魔力を生成して。


取り敢えず放出するー。












クソッ、妨害?そんなのありかよ。


…まさか聖剣が使えなくなるとは…。


俺は何とか聖剣との再接続を試みるが…聖剣はうんともすんともいわない。


…聖剣を使った「裁き」を使えなければ…あの魔物たちにラルトを蹂躙されちまう!


そんな時だった。


突如近くに膨大な魔力を感じた。


「ッ!なんだ!」


慌ててそちらを見ると…その魔力の中心にいたのはあの獣人の少女。


彼女から放たれる魔力はどんどん大きなってく。


凜も、俺たちの護衛騎士たちも彼女に注目する。唯一アンドレイさんだけは魔物たちを見続けている。


…魔力はどんどん大きくなる、どんどん…これは。


「…ミナミ…ちゃん」


つい、声が出る。


しかし彼女は俺の言葉を無視してひたすら魔力を放出し続ける。


「…くっ」


「なんだ…この魔力量は!?」


「これが…獣神族の力だというのか!?」


そして数分後、ミナミちゃんが放出した魔力はいつしか彼女の上に集まりだし。


とそこでミナミちゃん後ろを…俺たちの方を振り向き…言う。


「…総員、対ショック態勢―」


…うん?どういう。


「…ちょ、ミナミちゃん!」


「いっくよー!」


そうして彼女は唱える。


「ラグナロク」


それは北欧神話の終末の日。


その瞬間、彼女の頭上にあった魔力は消え。


あたりを閃光が覆う。


その時、世界から音が消えた。感覚が消えた。すべてが…消えた。










「…はっ!」


気が付くと俺は仰向けに倒れていた。


起き上がりあたりを見回す。


周りには護衛騎士たちが倒れており、丁度ふらふらと凛が立ち上がるのが見えた。


慌てて凜に声を掛けようとして気が付く。


二人だけ…ミナミちゃんとアンドレイさんが何事もなく立ち続けていた。


そしてその二人の見る先を見て驚愕する。


…魔物の軍勢が…きれいさっぱり消え去っていた。


「成功…したねー」


「…そうだな」


そんな二人の言葉があたりに響いた。














おおー、取り敢えず一番それっぽい言葉を唱えながら起源魔法を唱えたら、魔物たちだけが跡形もないなくなっていたよ。


「…ところで小娘、今の魔法はどんなものなのだ?」


「さあー?取り敢えず魔物たちに終わりが訪れるようにって、ねー」


「…終わり…か」


アンドレイは少し考え込むと、言う。


「…あれで…お前は…この世界を滅ぼせるか?」


なにー?その物騒な質問―?


…うーん。


「…無理、かなー?」


「…そうか」


あれでは『ラグナロク』ではねー?


…そうあくまで『ラグナロク』ではだ。


その他の手段を使えばーどうかなー?


あ、そんなことよりー?


「…なんかー生き残りがいないー」


なんかねー?魔物たちがいた中心付近い魔力を感じるんだよねー?


「…ああ、いるな…聖剣をジャックしていた奴だな」


なるほどー、じゃあ。


「直接つぶしにいこうかなー」


そんな感じで私たちは良介たちを置いて、生き残りと思われる何かがいる場所へと向かう。


















「ははは、なんだってんだよ…魔王から奪った僕の…軍勢が」


僕は…バステト…偉大なる獣神族の一人だ…。


今回、…ある魔王から魔物を強制的に借りた。


目的?増えすぎた人間を間引くため…これは亜神たる獣神族の責務の一つだとお父様から教わった。


しかし、その魔物たちが…突然あたりが光に包まれたと思ったら…一匹残らず消え去っていた。


訳が分からない…僕は確かに勇者の聖剣を一時的に封印したはずだ。


ならば他のなにかが?


そう、考えていた時だった。


「あー、いたいたー」


気の抜けた少女と思われる声が聞こえてきた。


声のした方を振り向くと。


そこには…銀髪で僕と同じ虹色の瞳を持った…獣神族の少女がいた。


…獣神族だって?


「…君は」


「私はミナミだよー」


そこで…僕は確信する。


勇者以外で、魔物の軍勢を滅ぼせるなど…僕と同類のこの少女にしか…できない。


「君が…魔物を?」


「そうだよー」


なにが楽しいのか…ニコニコしながらそう言う…ミナミという同類の少女。


「じゃあー、後はあなたを殺せばー終わりだねー?」


「僕を…殺す?」


そして…さらに笑みを深めながら、彼女は…言った。


「そう…これはねー正当防衛だよ?」


そう言うや否やミナミは神器と思われる槌を携えこちらに踏み込んできた。

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