第12話 機材トラブルー?
「なー南、お前も話に加わんねーの?」
「どうせ下ネタでしょー、興味ない―」
「そうかよ、まあいいや」
そうして去っていく同じクラスの男子。
僕は昔からこうだった。性に関する話に全く興味も関心もなかった。
それは中学生、高校生になるにつれより顕著になってきた。
僕は…女性にも男性にも興味がないのだ。
生物学的には男…でも精神はどちらでもない。
日本語圏ではXジェンダーと呼ばれるらしい。
そんな僕は…明確な性別を持つみんながうらやましかった。
恋愛感情という物がどんなものか知りたかった。
そう、だから僕は、異世界で…私になった。
女になればもしかしたら何かが変わるかもしれない…そう思ってのことだ。
そうしてついさっき、アホな親友に告白されたとき。
一瞬だが…何故か心臓が跳ねるようの感触が私を襲った。
これが、そう、なのかな?
…いやー、まだ色々と早計な気がするなー?
うん、取り敢えず、様子見と行こうかなー?
と、そんな感じで考え込んでいる私は今、城壁の上にいるよー。
城壁の上にはさっきの会議室にいた面々が勢ぞろいで、壮観だなー。
え、なに、冒険者が少なすぎないかって?
それはねー。
どうやら間の悪いことにラルトを拠点とする高ランクパーティーたちが合同で長期遠征に行っているらしくてね。
その結果、今いる冒険者はアンドレイ以下はBランクが一人、あとはCランク以下という感じになっている。
「皆々、集まっているかね」
とそこで新たな人物が城壁に姿を現す。
如何にも貴族ですって感じのおじさんだねー。
「…自己紹介しておこう…わしがラルト伯爵だ」
ラルト伯爵ということはこの町を治める領主ってことかなー?
「ラルト伯爵!俺が勇者良介でこっちが勇者凜です」
「おお、勇者殿、此度の助力感謝する」
わあー、貴族と対等に話してるー、勇者ってかなり高い地位なのかな?
「…ラルト伯爵」
とそこでアンドレイが伯爵に話しかける。
「…不動のアンドレイか…な、なんだ?」
あれー、伯爵様、アンドレイにちょうとビビってるねー
「魔物の規模は本当なんだろうな?」
「…ああ、偵察騎士に確認させた、間違いない」
おおー、まじで数十万いるのかぁ。
「…それよりアンドレイ」
とここで、伯爵が私を見る、なにー?
「その獣人の少女はなんだ、ここは精鋭しかいないはずだが?」
そうだね、ここには魔物軍勢を視認し次第、城壁から飛び降りて遊撃する人間が集まっているからねー。
とここで良介が。
「伯爵、その子の強さは俺が保証しますよ」
「勇者殿が?…うん?」
とそこで伯爵が何かに気が付く。
「その虹色の瞳、もしや獣神族!?」
驚く伯爵。そして。
「…なるほどな、獣人どもが崇める亜神、詳しくは知らないが、いずれの個体も強力な力を保有することだけは知っている」
へー、この伯爵は獣神族のことを知っているんだねー。
その時
―カーン、カーン
ラルトに鐘の音が響き渡る。
「来たか…総員、準備はいいな!?」
ギルドマスターが号令をかける。戦闘は彼が仕切るようだ。
全員がそれぞれ頷く。
「では行くぞ!」
そうして城壁を飛び降りていく、おっさんのくせしてアグレッシブな人だなー。
今回の作戦はこうだ。
勇者の聖剣を使い魔物を一気に殲滅する。シンプルだねー。
というか聖剣ってそんな威力の技を放てるのねー。
ここに集められた戦力は勇者の護衛というわけだ。
そんな訳で城壁に集められた精鋭は都市の外へと降り立った。ラルトは前にも言った通り平原に囲まれている。
まーね、その結果ねー、もう見えるわけよー、魔物の軍勢がねー。
「とんでもない数だ…」
誰かがそう呟く、まあ確かにこれはー?
「よし、さっさとやってしまおうか、凜!聖剣の封印を解いて」
「オーケーよ、良介君」
と良介が聖剣を抜き、それに凜が触れる。
すると、ただ聖剣が…黄金に輝き始める。
おおー、聖剣とやら、隠された力があったんだねー。
「よしゃっ‼いくぜ!」
良介はそう言いながら聖剣を大きく振るう。
すると…魔物の軍勢の上空に黄金の雲が現れる。
おおー、あれから天の裁き的なのがでるのかなー?
そう思い待つ。
待つ。
…
…
…
…ん?
「…何も起きなくない―い?」
黄金の雲が拡散していく。
と、そこで良介が
「…くそ!なんだ!」
なんか騒ぎ出した。
「どうしましたか!勇者様」
護衛の騎士の一人がそう問いかける。
「聖剣とのバイパスが突然切れた!だめだ!再接続できねぇ!」
えー…(困惑)
「ここでまさかの機材トラブルー?」
「違うぞ小娘」
とそこでアンドレイが言う。
「何者かが…恐らくあの軍勢を操る奴が…妨害している」
なにそれー?電子戦でも展開されてるのー?異世界でー?
とギルマスが
「それは本当か…アンドレイ」
アンドレイに問いかける。
「ああ、特殊な魔道波長が放たれている…間違いない」
へー、なんかよくわからないけどそうらしいーね。
「…聖剣が…使えないだって!?」
「聖剣がなければあの軍勢を相手するなど、不可能だ!」
「どうする?撤退か!?」
「ふざけるな!逃げ場などないぞ」
「クソっ!このポンコツ聖剣がっ!」
「落ち着いて!良介君!」
わー、みんな混乱しているねー。
「…おい小娘」
「なにー」
「お前なら何とかできるだろう?」
おー?
「…それを言うならおじさんだってそうじゃん?」
「確かにできるが…ここ一帯が人の住めない場所になるな」
「あー」
うん、これでアンドレイの最大火力が分かった。
恐らく、アトミック的な例のアレだろうね。
「…だから、お前がやれ」
…うーん、ここ最近ずっと思ってるんだけど、アンドレイが何を狙って私と行動を共にしているのかいまいちわからないんだよね。
私の力を隠したいとかなら今の発言はありえないからねー?
…
…まーいや、今は。
「しょうがないなー」
じゃあ、いっちょ、やりますかー?
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