第3話 ヒーロー誕生?③
(もしもスーパーパワーみたいなものが身に付けば勝てるかもしれない。けど……)
今の幸には恐怖を振り払うための力、端的に言えば勇気がなかった。見ず知らずの人間を自分の命を危険にさらしてまで救うための勇気、それがどれほどまでの覚悟の上に成り立つのかは想像に難くない。
そうして逡巡している間にも時間は過ぎていく。女性がしがみついてる床は今すぐにでも崩れそうだった。
その時ふと幸は自らの夢を思い出していた。
(『ヒーローになりたい』……)
自分自身も嘲った子供じみていて突飛すぎる夢。
(そうだよ……そうだったはずだろ……!)
実際に命の天秤を突き付けられると臆病になって何もできなくなる自分に再び嫌気がさした。
(見捨てるのか? 怖いってだけの理由で……助かるかもしれないのに!!)
自身を叱咤し、必死に奮い立たせる。
そして幸はついに決断した。
「蕾をください。やれるだけやってみます。」
もちろん目の前の銀髪の女性の言っていることがすべて真実とは限らない。もしかすれば何か思惑があって怪獣を倒させようとしているのかもしれない。
だが、そんなことをいちいち考えている余裕はなかった。幸は己の夢と、とにかく人を死なせたくないという心に突き動かされ、蕾と同化することを選択した。
その覚悟を読み取った女性はうなずき、蕾を手渡した。
「蕾を心臓に近づけてください。」
「了解です。」
女性の指示を聞いて幸は上着を脱ごうとする。
「あっ、服越しで大丈夫です。」
「……すみません。」
再び上着を羽織る。
服の上から蕾を胸に近づけると蕾の輝きが一層強くなった。
「正直、どんな力が身につくかは分かりません。」
「えっ」
ここまできてそれはないだろうと思う幸の心はいざ知らず、女性は続けて話す。
「ですがどんな力であっても奴を倒すことは出来ると思います。曲がりなりにも神の力ですので。」
「それならまぁ……」
「重要なのは心です。確固たる意思と覚悟。あなたにはその両方が備わっていると信じています。」
そんな大層なものが備わってるかどうか、自信はなかったがそんなことを今言っても何の意味もないと思い、ただ幸は
「精一杯頑張ります。」
とだけ答えた。
「同化が始まります。身構えず、リラックスした状態でいてください。」
そうして待っているとおもむろに黄金の蕾は幸の胸の中へ吸い込まれていった。
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