入荷未定の本屋

速水すい

未入荷の本屋さん

ある春の日、空は暖かい日差しに背伸びする坂倉刻さかくらとき

出会いがある新生活にいつもの通学路。

たまには違う道を歩きたくなる。



時間に余裕もあり、いつもと違うルートを歩く。桜並木がある道路沿いに一件本屋がある。


老舗の様な外見、木造建築のような造り。

人が入って行く気配はない、店前にある本棚に置かれている本誌は色褪せている。年季を感じる。


入ろうか悩む、ただ立ち尽くす。


気になりポケットからスマホ画面を開く。近くの高校に向かわないといけない時刻を表示していた。新学期早々遅刻、流石にそれはない。検索する時間も惜しい。



慌てるように駆けた、学校は間に合った。

土曜日、再び訪れた本屋。

時間的に余裕がある、改めて書店前を歩く。


ガラス越しだが"未入荷"と言うポップが目に止まる。中は本誌や図書館にある様な分厚い本が棚にびっしりあるのが見える。



とりあえず店内に入る、自動ドアが開く。

客は小さな少女一人、辞典書を開いて眺めていた。ラノベ系とかそう言った書籍はない、若者向けってわけでもなさそうだ。



店主、老爺が一人レジに座り居眠り。

不思議と見渡せる店内、見た目と比べて広さがある。奥に進むと、テーブルとソファがある。そこに座っていたのは同年代の短髪の女子高生だ。


たまたま目が合う、驚いた表情で声を飛ばす。



「君?」


質問の意図が分からない、まるでかの言いようだ。


「どうゆう意味だ?」

「君は知らないか、なら教えてあげるよ。


尚更意味が分からなかった、全部とは数千程あるだろう。それに帰れないとは。

店の窓から外を見ると、夜見たく真っ暗だった。しかも道が見えない。


「君が見た未入荷は、人を招き入れる為に貼ってあるんだよ」

「本が並ぶんじゃなくて、意味かよ」

「ご名答、帰りたいなら読破よ」


本屋の未入荷は、とんでもなく怖い本屋でした。

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