考えるより先に足が出る【SS】

響華

考えるより先に足が出る

「読んでる本の新刊が出ると、すぐ読みたいってなっちゃってさ」


「それはわかるよ? 私だってそわそわしちゃうし」


「いてもたってもいられなくって、ついつい当日に本屋に行っちゃうんだけど」


「今日みたいに?」


「そうそう、今日みたいに……ねぇ、やっぱ怒ってる?」


「いや、ぜんぜーん?」


「嘘だ、顔赤いもん……毎度毎度、北海道は二日遅れてるって忘れて目当てがないの、申し訳ないとは思ってるんだよ?」


「先走りすぎなんだよ、私はちゃんと仕入れてるの見てから来てるからね」


「むぅ、流石だなぁ……でもほら、本屋ってあれだよね、目当てのものがなくてもついつい歩き回っちゃう」


「まあそうだね、ああやって沢山並んでるのを見ると、なんか運命の作品が見つかりそうでさ」


「わかるわかる、表紙買いとかしちゃってね。ついつい使いすぎちゃう」


「まったく……無駄遣いは良くないよ? それにほら、相談しないで買ってくるから。たまに買ったもの被るじゃん」


「まぁねぇ……でも、任せてよ。今日のは被ってないって言えるから」


「……やっぱりまた衝動買いしたんだ。それで? 今回はどんなのを買ったのさ」


「それは、その……」


「なに、はっきりしなよ。もしかしてエロ本でも買ってきた?」


「まさか! そんなことするわけないじゃん!」


「どうだか、ねぇ? ……三番目の引き出し」


「待って」


「そういう関係がしたいなら、素直に言ってくれればいいのに」


「本当に待って! わかった、言うから……!」


「よろしい、で? 何を買ってきたのさ」


「僕だけ恥ずかしい思いしてばっかりなんだけど……はい、これ」


「……あー……」


「二人の将来の話だし、もう少しムードのあるときに見せたかったんだけど……やばい、今僕、相当顔赤くなってるよね……」


「あはは、私と同じだ……もう、だから先走りすぎなんだって」


「まだ早かった?」


「いや、だからさ……また被っちゃったじゃん」

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