第2話 つまり、激レアスキルってこと

 王城で行われる”スキル継承の儀式”に参加するのは、王族である俺と、王都に住む高位貴族、それから役職を持った人物の子供だけである。いつもは三人程度なのだが、今回に限っては十人以上いるようだ。


 これってあれだよね。俺の誕生に合わせて、子供を作ったということだよね?

 学園の同期として俺と仲良くなれば、色々と便宜を図ってもらえると思っているに違いない。貴族って怖い。


 俺の儀式は最後に行われることになっている。今も子供たちが教会本部から派遣された教皇様からスキルを授かっている。教皇様を呼びつけるって、なかなかできることではないと思う。それはまるで、この国の王家と教会の力関係を如実に表しているかのようである。


「ルーファス・エラドリア様、こちらへ」

「はい」


 いよいよ俺の番だ。緊張感はクライマックスである。おなかが痛い。

 ちなみにスキルに関しての優劣は存在しない。どんなスキルでも使い方次第で、有用にも、無用にもなるからだ。

 つまり、必要なのはスキルを授かってからの個人の頑張りってこと。


「それではこちらの水晶に手を当てて下さい。大丈夫ですよ。少し光るだけですから」

「はい」


 丸い水晶の大きさは大人の頭ほどである。その水晶の上にドキドキしながら手を乗せた。すると、水晶がパアッと一瞬だけ輝いた。これまで見てきた子供たちのときと同じ反応。

 どうやら強い光が放たれて、”な、なんの光ー!?”とはならなかったようである。よかった。普通で。


「ルーファス様にスキルが備わりました。召喚スキルです」


 おおお! と会場からどよめきがあがった。聞いたことがないスキルである。もちろん、一緒に儀式を受けた子供たちの中に、同じスキルを継承した人はいなかった。

 それもそのはず。この世界には多種多様なスキルが存在するのだ。十人程度で同じスキルを継承することはまずないだろう。


 それでも会場がどよめいたということは、その中でも珍しいスキルだったのだろう。

 もしかしてチートスキルだった?

 そんな不安が頭の中をよぎっている間に、俺の父親である国王陛下が玉座から立ち上がった。胸の辺りまで伸びている黄金色の髪がサラリと揺れる。

 国王陛下のサファイアブルーの瞳がこちらを向いた。なんか国王陛下の目、輝いてない?


「召喚スキルか。実に面白いスキルを授かったな。そのスキルは国内でも数人しか持っておらず、現在もどのようなスキルなのか、よく分かっていないなのだよ」


 笑顔で国王陛下がそう言った。よかった。”なんだそのハズレスキルはー!”とか言われて、国外追放とかされなくて。どちらかと言えば、あの国王陛下の目は興味津々なんじゃないかな。いずれにせよ、どうやら無事にスキル継承の儀式は終わったようである。やれやれだぜ。


「ふむ、ちょうどよい機会だ。ルーファスを召喚ギルドのギルド長に任命しよう。ルーファスよ、召喚スキルの謎を解明するのだ。それがお前の使命だ」


 は? いきなり何言っちゃってるのお父様ー! スキルをもらったばかりの七歳児に与えるような役職じゃないでしょうが!

 クックックとお父様が笑っている。おそらく驚いている俺の顔が面白かったのだろう。こんなとき、どんな顔をすればいいのだろうか。


 助けを求めてレナードお兄様とギリアムお兄様の方を見ると、二人とも苦笑いしていた。

 どうやら二人のときも、俺のときと似たような無理難題を言われたようである。

 これが、これがお父様のやり方かー!


「そんな顔をするな。この国の召喚ギルドに所属するのは二人。ルーファスを入れると三人になる。二人ともこの王城で働いてもらっているので、あとであいさつに行くといい」


 いまだにニヤニヤとしているお父様がそう締めくくった。

 どうやら試されているみたいだな。ここは無能の烙印を押されてお城から追い出されないようにするためにも、少しはいいところを見せる必要がありそうだ。


「この度はギルド長に任命していただき、まことにありがとうございます。すぐにあいさつに行って参ります」

「ルーファスは堅いなー。そんなんだと、身が持たないぞ。どうしてこんな子に育ってしまったんだ」

「……」


 嘆くお父様。堅物で悪かったね。でもこんな大っぴらな場所で”手を抜きなさい”みたいなことを言うのはどうかと思うよ? あとでお母様に怒られても知らないからね。


 チラリとお母様を見ると、緩いウェーブのある銀色をした長い髪がフルフルと左右に揺れていた。

 お母様は口元に扇子を当てて、眉をゆがめている。そのサファイアブルーの瞳はジッと国王陛下を見つめていた。あれはあとでお母様から説教されるな。




 スキル継承の儀式を無事に終えた俺は、その足でさっそく召喚ギルドへと向かった。使用人に案内されて向かった場所は、まだ一度も足を踏み入れたことのない場所だった。

 大体さ、このお城、広すぎるんだよね。王族が全員そろったとしても、こんなに広さは必要ないでしょ。


 王族としての威厳をたもつために必要なのだろうとは思うが、その広いお城の中を移動する七歳児の身にもなってほしい。

 こうなったからには、その召喚スキルとやらで、俺の足となる動物を召喚しよう。


 もっとも、俺が想像している”召喚スキル”とはまったく違う可能性もあるけどね。

 召喚スキルを使うことで、モフモフな仲間たちを呼び出すことができると俺は思っているのだが、まさか、魔界から怪しげな生物を呼び寄せるようなスキルじゃないよね?


 エロイムエッサイムとか言って、ガーゴイルとか、アーリマンとか、インプとかを呼び出すスキルじゃないよね?

 ネコちゃんを、ワンちゃんを、モフモフを、モフモフを俺にくれー!


「ルーファス様、ここが召喚ギルドになります」

「ハッ! いつの間に……あり……ここまでていいよ」


 危ない危ない。また”ありがとう”って言うところだった。禁止されているんだよねー、王族が下々の者に言う言葉ではないとか言われてさ。訳が分からないよ。

 ありがとうって言ってもいいじゃない。人間だもの。

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