第16話 プチざまぁ
その後、おれは椿川高校から隣県の
しかしある日、吹奏楽コンクール地区大会の会場で佐山と再会した。
「せ~んせい。お久し振りです」
他県の地区大会にこいつがいるはずはない。おそらくおれに会うのが目的だろう。
「
「新しい学校でバタバタしててな。それよりお前の学校も今日は大会じゃないのか?」
おれは露骨に嫌な顔を浮かべ答えた。彼女はおれに近づきべたべたと体を触ってきた。
「部活は辞めちゃいました~。それより先生、この後お時間ありますか?」
あまり気は進まなかったが、おれは自宅を避けラブホへと向かった。事が済んだ後、唐突に佐山はおれに言った。
「せ~んせい、実はちょっと見て欲しい動画があって……」
これなんですけど~と、言ってスマホの映像を見せてきた。それはあの日、佐山といるところを
顔を平手打ちされ激高したおれは愛伊香の腕を思いっきり引っ張っていた。
映像はそこで終わっていた。
「あの時は修羅場でしたよねぇ。私思わず動画撮っちゃたんですよぉ」
クスクスと彼女は笑っていた。おれは服を着ながら佐山を睨み付けた。
「これをおれに見せてどうするんだ? 羽田の件はもう事故として処理されてるぞ」
「知ってますよぉ。でも羽田先輩と関係を持ってたって、これを見るとなんとなくわかりますよねぇ」
おれは何も言えず言い淀む。こいつの狙いがなんとなくわかった気がした。
「私がこれを見せて、この時の状況説明すれば先生結構やばくないですか?」
小首を傾げかわいい仕草で彼女は言うが、その姿が逆に腹立たしい。だがこいつが言う事はもっともだ。この映像データの日付は愛伊香が橋から落ちる前日だろう。これが原因で彼女が自殺した可能性もまた再検証されるかもしれない。
おれはちらりと佐山が持つスマホを見た。彼女はさっとスマホを胸元に隠すと、うふふと笑いながら言った。
「無理矢理消そうとしてもダメですよぉ。ちゃんとコピーは家に保管してます」
それからは当然のごとく金品の要求が始まった。毎回それ程の額ではないのが佐山のずる賢いところだ。どちらかといえば、おれを手玉に取っているのを楽しんでいるのだろう。僅かな不安は残しながらも佐山との関係は続いていた。
そして海蘭高校へ来て二年目の新学期。吹奏楽部に新入部員が入ってきた。
その中の一人に愛伊香に少し雰囲気が似ている生徒がいた。名前は
彼女はフルートを演奏していたが、演奏中の眼差しはどこか愛伊香を思い出させた。
ある日の練習後、おれは彼女に声を掛けた。
「城山さんちょっと残ってもらっていいかな? 個別で指導したい箇所があるんだ」
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またこいつ……
今回はあくまでプチざまぁです。
きっと佐山にもざまぁが待ってます。
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