幕間

クルツホルムへの道中は何事もなく、斥候隊を無事詰所まで送り届けることが出来た。時刻はまだ15時過ぎであったが、奈落の魔域シャロウアビス破壊から主の討伐まで一度の探索で一気に行ったため全員の疲労も多く、そのままクルツホルムで1泊することとなった。


「酒は元々好きだったんだが、酒盛りがこんなに楽しいことだなんて、ここに来る時ゃ思わなかったな。俺の師匠は全然そーゆーとこに連れてってくれなくてよ。」


「まぁ、こうなることが分かっていたから連れて行かなかったんだろうな。素晴らしい判断だと思う。」


「だろ~俺のシショーはスゲーんだよ。…ん? 褒めてるよな?」


シャロームとミリヤムは酒場に行き、情報屋への近況報告がてらに宴会を行っていた。森林の主討伐・平原の魔域破壊+主の討伐を情報屋に売りつける事で今回の酒代がタダになったので、気を良くしたシャロームがその場にいる全員に酒を奢ってしまったのだ。もたらされた情報も久しぶりの吉報だったため酒場で腐っていた商人達も有頂天となり、周辺地域を安定させた冒険者達を"平定者"として祭り上げ、宴会は大盛況となっている。


「困ったな…別に目立つつもりはなかったのだが。」

「いいだろ別にぃ。こいつらも商売できずにどん底だったんだ、いいだろぉ別にぃ。ヴィルマの話も新しく聞けたしよ、WIN-WINってやつだ。」

「酔いすぎだ…アメジストは賛同するだろうが、エンレイは怖い。資金が吹き飛んだのだ。想像に容易いぞ。」

「んだよ、オメーも漢ならドンと構えとけドンと。」

「え、いや、僕は男とは一言も…」

「大丈夫ダイジョーブ♪ エンレイにはカティの腹巻渡しておいたから、今ならご機嫌だよ!」


またしてもいつの間にかOECが参加していた。商人達を代わるがわる手玉に取りながら、酒ではない何かを飲み漁っている。つくづく恐ろしい生物だ。


「失礼…ああやっぱり。草原の主を倒した冒険者というのは貴方達でしたか。宴会の話が街中噂になっていたので、皆様こちらにいらっしゃるかなと。」


OECを連れてきたであろう魔導列車の車掌ヤルノが、漁師の恰好をした人達を連れ2人の目の前に現れた。


    †


「ゼロ丸ぅ~。ごめんなぁ~。うぅ…」


アメジストは彫像化したゼロ丸を抱きしめてベッドで寝そべっている。横ではエンレイがOECから受け取ったカティアのターバンを写生していた。


「ゼロ丸の事、大事にしているのね。」


「そりゃな! 母上からいただいた馬で、子どもの頃から一緒なんだ。私の事を幾度も守ってくれた大事な相棒だ。」


「あら、専用馬だったのね。てっきりライダーギルドから借りているのかと思ってたけど。…買い物にも疎かったみたいだし、もしかして結構お嬢様なのかしら。」


「え、うん、まぁ、そうだな。別に君達に隠す必要もないのだが…」


アメジストが言い淀んでいると、部屋のドアがノックされ、ミリヤムとOECが部屋に入ってきた。後ろにはシャロームもいたが、女子部屋を覗けないのか、背を向けて一升瓶をラッパ飲みしている。


「休憩中すまない。鉄道ギルドのヤルノ経由で、ハーヴェスの漁業組合から依頼が入ってな。火急の要件らしく受領することとなった。時間があれば協力してほしい。」


「「ハーヴェス?」」


ヤルノによると、ブルライト地方ハーヴェスから水中に強い蛮族が逃げ出し、討伐を担当していたハーヴェス漁業組合がこの街まで追ってきたが、土地勘がなく潜伏場所の見当もつかないため冒険者ギルドに依頼をかけたらしい。夕方という微妙な時間帯ですぐに動ける冒険者が見つけられず、丁度その場に居合わせたヤルノとOECによって、一行に白羽の矢が立ったという事だ。

対象の蛮族は変装時の見た目が完全にエルフであり、幾度となく戦ってきた組合人でなければ判別は難しい厄介な魔物である。生贄や略奪を是とする邪教を信仰しており、ヒト族に紛れて邪教を広めているため放っておくと地域に重大な影響が出るとの話だ。


「エルフ似とかめっちゃ美味しそうじゃない?楽しみ~」

「おい…。兎に角、僕達は行こうかと。魔導士は疲労も激しいだろうから、2人も出来ればで構わない。どうだろうか。」


ミリヤムの問いかけに、ベッドからゴロゴロと顔を出したアメジストが返事をする。


「すまない。私…というよりゼロ丸が限界だ。これから馬小屋でゆっくりさせようと思ってな。不本意だが、無理して足を引っ張るよりは良いと思う。エンレイはどうする?」


「うーん…そうね。ハーヴェスの話を聞きたいし、私は寝る事もないから、行ってくるわ。明日以降のためにもアメジストはゼロ丸と休んでちょうだい。」


「ありがとう。よろしく頼む。」


こうして、エンレイ、ミリヤム、OEC、シャロームは漁業組合の協力者と共に逢魔時の街へ繰り出すのであった。


    †


「この街で水辺なんて風呂だけだろ、ちょっと見てくる。行こうぜ、兄ちゃん。」

「じゃ、オレは酒場たんとーう! イってきまーす!」


シャロームは片手に一升瓶、片手に組合の若い青年を抱え込み、銭湯に向かっていった。OECは先ほどまで宴会をしていた場所とは別の酒場へ向かって走り出す。その他漁業組合の関係者は、各々聞き込みをするため街に散らばっていった。


「…さて、、どうやって探しましょうか。」


溜息混じりのエンレイの問いかけに、ミリヤムは二つの候補を上げる。


「一つ。エルフの集まりそうな場所を探す。あてもなく街中を聞き回るしかない。

 二つ。僕達と別れた後のルミナリアの行方を追う。エルフを見つけて奇声を上げる分かりやすい道しるべだし、黙っていればあれ程の美人だ、すぐにでも見つかるだろう。」


「…素敵な提案ね。私もそれが最も効率的だと思ってしまうわ。」


探してみると、ルミナリアは本当にすぐ見つかった。エルフと人間が人目も気にせずいちゃついているという情報を聞き街の中央にある繁華街へ向かうと、広場の椅子で緑髪ショートカットのエルフにべったりとくっついている変質者がいたのだ。対象が寡黙な性格なのをいい事に触れてつまんであーんしてと好き放題しており、エルフの子は鬱陶しそうにしつつも、別の何かが気がかりなのか黙って顎を付き考え込んでいる。コルガナ地方の冒険者のようで、一見した装備は一行と同程度である。


「…何してるの、ルミナリア。」

「なんですかな、私の蜜月の時に。邪魔しないでほしいですぞ。」

「いや、僕も関わりたくはなかったんだが、実はエルフについて君に頼みがあってね…もし、そこの冒険者の方もついでに聞いてもらえるか。」


ミリヤムの問いに、静かに頷く冒険者。先程の漁業組合の話を2人にすると、エルフの子は納得したように「ああ、そうか」と声を出し、ルミナリアは激昂し始めた。


「は? エルフ様に偽装する蛮族? なんですかその不敬な輩は。絶許。絶殺。殲滅しましょう。私も付いて行きます。」


怒りで口調が戻っているルミナリアをみて、信頼をもってエンレイが聞く。


「まぁ、そう言うと思ったわ。蛮族は集団で街に入ってきたらしいんだけど、どこか検討はつかないかしら。私達も別にこの街に詳しい訳じゃないのよね。」

「はい。ボク、知ってる。エルフにしてはおかしな空気を纏っていた。」


エンレイの問いに答えたのはルミナリアではなく緑髪の少女であった。


「この人に絡まれる前に、銭湯に向かう大人数のエルフを見た。なんか変だなーと思って様子見しようとしたら、路地裏にもっと変な人、この人見つけて声をかけた。そしたら、めっちゃ絡まれた。」


「あ、いや、エルフ様から声を掛けられたものでつい‥じゃなくて、エルフ様の集団なら確かに銭湯に入っていくのを見ました。彼らは街に着くとすぐに銭湯へ向かっていきましたね、最初から追いかけていたので間違いありません。」


「お、おう、成程。そしたら銭湯で何か行っているとみて間違いない様だな。」


「銭湯ならシャロームが向かってたわね。気付いてくれるといいんだけど。」


目的地への道順を目視で確認していると、緑髪エルフが手を上げて主張する。


「はい。ボクも連れていってよ。ボクも冒険者。それに君達、街で噂の"平定者"。強い人達の戦い、見てみたい。ボクの名前はセレン。イーヴの神官。よろしくね。」


「"平定者"? 何かしら、それ。」


「あー、それなんだが・・・」


宴会の話を聞いたエンレイの冷めた視線にミリヤムが苦しみつつ、4人はシャロームの向かっていた銭湯へ足を伸ばすのであった。


    †


銭湯はクルツホルム繁華街から少し離れた高台にあり、露天風呂は街中を見通せる絶景スポットとなっている。普段はクルツホルム住人の憩いの場として昼夜問わず賑わっているのだが、今日は入口に柵と張り紙が置いてあり、「本日貸切」という文字が人々を遠ざけていた。中から話し声が聞こえてきたため建物内に入ると、受付の席でシャロームが漁業組合の青年と酒を交わして語り合っている。


「そぉなんだよ、うちのパーティ女子供しかいなくてよぉ、男一人の俺は肩身が狭いわけよ、よく分からん奴もいるけど。」

「いやいや、羨ましいっすよ、組合なんてじーさんばーさんばかりで恋の一つも出来やしない。『モーリーの相手は銛がお似合いよ』とか言われるんすよ。切なくてもう。」

「はは、いいじゃねぇか"銛持ちモーリー"。あだ名があるのはその組織に存在している証拠だぜ。頑張んなって。」


背中をバンバン叩きながら酒を注ぐシャロームを見た後、セレンがルミナリアを見ながらつぶやく。


「君達、変わってる。面白いね。」

「…そうね、返す言葉もないわ。」


視線を貰えて笑顔のルミナリアとそれにまた溜息をつくエンレイ。4人に気付いたシャロームがにこやかな笑顔で出迎える。


「おおおお、待ってたぜお前達。こん中に蛮族共が居んだが人数が多い、二人じゃ流石にキツイ。番頭曰く出入口はここしかないらしいからよ、多分逃がしちゃいねぇぜ。」


「それはいいけど、どうして貴方は番頭の席でお酒飲んで酔っ払ってるのかしら。」


「あー、番頭の野郎がよ、今日は貸切だから帰れだぁ仕事中は酒飲めねぇだぁ抜かすからよ、じゃあ代わりに俺が番頭やるから今日は帰れって言ってやったのよ、ちょーっとだけ強く言ってやったんよな。」


受付台に丸い穴から広がる亀裂があり、恐らくシャロームが槍で付けたものだろう。


「…つまり、侵入して脅して奪い取ったのか。強盗だな。」


「ま、待ってください、中に蛮族がいるから逃げてくださいって言ったのは僕です。実際危険かも知れないので逃げてくれたのは正解でした。」


モーリーがシャロームを庇いつつ、中の様子を説明してくれた。

大浴場にはエルフが8人おり、今のところは普通にお風呂に入り歓談を楽しんでいる様子。聞こえてきた会話の内容的に、元々4人の集団が2つ合わさって8人になったらしく、クルツホルムへの電車でお互い意気投合して共に裸の付き合いをしたく銭湯へ来たとの事だ。


「奴らは邪教を広めるために、まず最初にヒト族と良い関係を結びます。恐らく4人は布教対象なのでしょう。覗き見た感じでは、蛮族は間違いなく紛れています。ひと目見てしまえば私も蛮族かどうかは分かりますので、あとはどうやって一般客を避難させるかですね。」


「おまえ、やるな。この酔っぱらいとは大違いだ。」


情報を的確に伝達したモーリーにミリヤムが感動する。


「ああいや、違うんですよ。中の確認や聞き取りはシャロームさんの指示でして。"自分は人の裸なんて見れない"って可愛いこと言 ガハッ!!」

「余計なこと言ってんじゃねぇ!!」


鈍い音と共に吹き飛ぶモーリー。赤い顔を酔いのせいにしつつシャロームが槍を持つ。


「とにかく。どす黒い魔力持ちが中に4人いる。見りゃ分かるッてなら先攻しちまえば蛮族共を引き剥がせるだろ。グズグズしてっと一般人も何されるか分からねぇし、戦闘準備して中に入るぞ。」


気合を入れ異貌化して前に立つも、入口のドアを開けられない純潔なシャロームであった。


    †


「え、なんですかあなた達。今日は貸切にしたはずですよ。」


大浴場、の手前の足湯で服を着てくつろぐエルフ達をみて、無言でモーリーを殴るシャローム。モーリーは殴られながら大爆笑している。意外と意地の悪い男の様だ。


「ええ、お寛ぎのところ大変申し訳ないのですが、少々確認したいことが…」

「いっただっきまーーーーー!!!」


エンレイの丁寧な挨拶中にそれは上から舞い降りてきた。黒きコートを翻し、桃色の髪をたなびかせ、"ピンクの悪魔"OECが屋根上から一直線に一人のエルフの元に着地し、首元に噛み付いた。


「おえっ、まずぅい! ちょっとぉ、期待してたんだけどぉ?」


OECの奇行にエルフ達は絶句しているが、慣れている冒険者達は一足先に動き始める。


「そうですな、そいつとあとそいつとあいつとあいつがエルフ様ではありません。佇まいに高貴さの欠片もない。」

「俺の判断も同じだ! モーリー、どうだ!?」

「間違いないかと! 奴らは皆、蛮たる片目を常に隠しています!」


先手を取って蛮族と思われるエルフを突き飛ばし、一般エルフをその場から引き離す冒険者達。滑稽な行動にも関わらず各々の素早い対応と判断力を見て、ひとり呆気にとられていたセレンが笑う。


「あはは。なにそれ。見に来てよかった。変だけど、凄い人達だ。」


    †


突き飛ばされ、浴槽に落ちた偽エルフ達は、起き上がると髪や帽子で隠していた片目を露わにする。小さな眼から烏賊のような触手がいくつも這い出てきており、先程までの人間体とはまるで違う、蛮族と呼ぶにふさわしい姿となった。


「何故、気付かれた。我らゼアネモ族の変身術、そう簡単に見つかることはないはずだ。ハーヴェスの情報を対価にこちら側の邪教団に取り入るため、この地では大人しくヒト族でいるつもりであったのだが。煩わしい限りだ。」


「残念だけど、あんた達を放っておいたらナイネルガ様に顔向け出来ないんでね。」


銛を構えたモーリーが勇ましく名乗りを上げる。隣ではジオグラフを展開したルミナリアがゼアネモ達を睨みつける。


「ご丁寧な名乗り上げ感謝します。おかげで私は、復讐以外の生きる目標が見つかりました。…十年後も存在しているといいですね、ゼアネモ族。」


美貌の笑顔は明確な殺意をもって蛮族に向けられる。魔法行使準備をしていたエンレイとOECは彼女の行末を心配する。


「復讐に囚われていた彼女にとっては、その後の未来にやるべき事が見えたのは嬉しい事なのかしらね。」

「どうだろうね~。あのヒト、何事にも全力過ぎるから心配だよオレは。」


変貌したゼアネモ達は触手を使って変幻自在の攻撃を仕掛けてきた。触手による攻撃は狭い大浴場ならば後衛にも届くはずだが、何故かゼアネモ達はシャロームばかりを執拗に狙っている。彼らがエルフ語で会話していたためシャロームも他冒険者も聞き取ることは出来なかったが(ルミナリアはエルフ以外の話すエルフ語を理解しようとしない)、純エルフであるセレンだけは内容を理解していた。


「"ハーヴェスの英雄を殺せ"…? 彼、あっちでもなんか活躍したの?」


守りの要であるアメジストは不在であったが、OEC・セレンのダブル神官によって体力の維持が安定したため戦況不利に傾くことはなく、シャローム・モーリーのダブル槍前衛で敵を翻弄し、怒れるルミナリアを始めとした魔法攻撃が着実に敵を沈めていった。準屋内での戦闘は初であったが、誰一人倒れることなく無事に勝利を収めることが出来たのであった。


「いやー、温泉が蛮族の血だらけだ。あの番頭、怒られるだろうなぁ。」

「蛮族のせいで受付台壊れたって言っちゃえば俺達は平気っすね。」

「お、いいなそれ。モーリー天才かよ。」


戦闘後、大浴場から見える絶景を眺めながら、持ってきた酒を飲み干すシャローム。自身が狙われていた事など露知らず、呑気に観光名所を楽しむのであった。


    †


冒険者ギルドに戻り、事の顛末と大浴場の惨状を報告する。漁業組合の人達は結果に安心し、ハーヴェスの名物海鮮丼を振る舞いながら活躍したモーリーを褒め称えている。槍の捌き方について気になる技法があったのか、シャロームも輪の中に混ざっていた。


「"銛王ナイネルガ"? そいつの技術を使って戦ってたってことか?」


「そうなんですよ、偉大なるハーヴェス漁師の守護神、我らの誇りとも言える戦闘術。もし気になるならお教えしましょうか?」


「おお! マジか! …と言いたいとこだが、今は急いでてよ、何日もかけてらんねえんだ。時間がある範囲で教えてもらえると助かる。てかこの海鮮丼、美味ぇ!!」


海の漢達が盛り上がる中、エンレイ達は椅子に腰かけて海鮮をつまむ。


「…まさか、報酬が料理だなんて。いえ、美味しいから勿論不満ではないのだけど、シャロームが使い切った所持金の事を考えると…困ったわ。」

「いや、本当に申し訳ない。僕がきちんと止めていれば…」

「偽エルフ不味かったからボクはこっちの方が嬉しいな~」

「全く、とんだ不届き者達でしたな、某の人生で二番目に許せない出来事でしたぞ。」


ルミナリアはセレンを膝に乗せ、口に海鮮料理を運びつつ彼女の髪を嗅ぎながら、もとい梳かしながら今回の苦労をぼやいている。恥ずかしげもなく自身の欲望を満たす姿は最早誇らしいが、セレンも嫌な顔をしていない。


「いつも、こんな感じ? 賑やかで、楽しくて。恰好良いのに、変な人達。」


セレンの新鮮な一言に、目を合わせて笑う冒険者達であった。


    †


夕食兼祝勝会も無事終わり、夜の帳が下り星空が見えてきた。依頼された任務を終え冒険者達はアメジストの残る宿へ戻っていく。漁業組合の人達は後片付けをしながら、今回の件を振り返る。


「いんや、コルガナ地方まで必死こいて来たけど、無事討伐出来て良かったなぁ。」


「そうさね~。あんな奴ら、別地方の人じゃ絶対見抜けんじゃろうし。見た目はエルフそっくりさね。」


「ほんだなぁ。そっくりと言えば、あの兄ちゃんもびっくりしたでなぁ。」


「本当に驚きました、まさか同種同名の方がいらっしゃるとは。」


「ハーヴェスの七英雄、そして我らが青空市場の看板娘"暴食ノ天魔"にそっくりだったなぁ。ナイトメアってだけで珍しいのに、名前も顔も一緒とはねぇ。」


「俺なんか最初合った時ドッペルゲンガーかと思って警戒しちまいましたよ。」


「分かる。酒飲んではしゃいでなきゃ割と疑ってた。粗暴だし性別も違うしな。」


「でも海鮮丼はやっぱり気に入ってくれたさね。」


「兄ちゃんに昔の事聞ける雰囲気でもなかったし、帰ったらシャロちゃんに聞いてみんべ。」


「だな。」


奇跡の出会いを不思議に思いつつ、ハーヴェスへ帰還する準備を整える漁師たちであった。

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