第9話一時期間

作中で呪文や呪いなどは横行していたが、この展開には覚えがない。

学園の生徒同士が闘い合う展開など僕は知らない。

もちろんナターシャがスピカを呪っていたのは知っていたが…。

最近では学園の生徒同士での闘いが横行している。

一体何が起きているのだろうか。

蚊帳の外の僕には理解できない展開が繰り広げられている。

そもそもの話、物語の中に入っただけで先の展開など知っているわけではない。

それは現実世界での人生と何も変わりはしない。

ただし人間としてのスペックだけは格段に違っていた。

僕はかなり有利な立場なわけだが…。

何故か僕は追いやられている立場にある。

どうしてこうなった…。

「兄様。私の愛を受け取ってください」

妹であるスピカは大胆にも下着姿で僕に迫ってくる。

「ちょっと…スピカ…」

目をそらしてスピカのことを見ないようにするのだが彼女は僕の手を引いてそのままベッドに押し倒す。

「良いではないですか。本当の兄妹ではないのですから」

スピカは訳知り顔な表情で口を開くので僕の秘密はバレているのだと理解する。

「なんでそれを…」

僕は思わずそう口を開いてしまう。

「やはりそうだったのですね。これで一安心です」

スピカはそのまま僕の唇を奪うとそのまま行為は始まっていく。

無理矢理にスピカは僕の操を奪うと満足が行くまで一人で楽しむのであった。


翌日のこと。

ジャクリーンは再度僕を呼び出すと今度は大概の生徒に気付かれない秘密の部屋に僕を押し込んだ。

「ここなら誰も来ないから」

ジャクリーンはそのまま僕に壁ドンをすると険しい顔つきで口を開いた。

「本物のジンを返して。貴方はジンじゃない」

その言葉で何故か僕の抱えている秘密は漏れているのだと理解する。

「それは…無理だよ…」

誤魔化すこともできずに言葉を口にするのだが彼女は首を左右に振る。

「私達ならどうにか出来る」

ジャクリーンの言葉を合図にナターシャとフランシスが部屋の中に入ってくる。

「私達は貴方の秘密を知っている。そして元に戻す方法も知っているの」

ジャクリーンの言葉に他の二人も頷く。

「どうすれば元に戻るっていうんだ?」

彼女らに問いかけると三人は魔法の詠唱を開始する。

そのまま長い詠唱の果に紫色の光が僕を包み込むと、そのまま僕の精神は元の世界へと帰っていく。

現実世界での僕は…。

あの日の横断歩道で立ち尽くしている。

暴走者もその場にはもうそこには居ない。

僕は一つ嘆息すると少しだけ残念な気持ちを抱いたまま帰路に着く。

帰宅するとスマホに通知が届く。

「まずは友達としてから始めてほしいな。それで異性として見れたら…みたいな感じでも良いかな」

告白した相手はスマホでメッセージを送ってきて僕は少しだけ微笑んでしまう。

「そうだね。僕も急すぎた。少しずつ仲良くしてほしいかな」

その様な返事に相手は了承の返事をくれる。

これで僕の一瞬の内に見ていた夢のような話は一旦幕を閉じるのであった。

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