第5話スピカ復帰

学園にスピカが戻ってきた。

「しばらくの間、休んでおりました。スピカ・ジルクニスです。ジンとは双子の妹なのですが…皆様どうぞまたこれからよろしくお願い致します」

しばらくぶりに学園に顔を出したスピカは教壇の前で挨拶をすると生徒の顔を見渡していた。

生徒が再会の拍手をするとスピカはそれに答えて席に向う。

ジャクリーンはスピカに笑顔を向けていてフランシスもどことなく優しい笑顔を向けていた。

しかしながらナターシャだけは気まずそうな表情を浮かべている。

「貴女が犯人ね」

スピカは冷ややかな視線をナターシャに向けると小声で口を開くと何事もないように席に腰掛けた。

ナターシャは明らかに動揺したような表情を浮かべており僕に助け舟を出していた。

それに仕方なく頷くと隣の席に腰掛けてきたスピカに耳打ちする。

「あまり敵を作るなよ」

スピカはその言葉に微笑んで応えると何事もなかったかのように頷く。

そのまま授業は恙無く始まっていき僕らの新しい学校生活はスタートした。


本日は座学のため実践授業はなく教室だけで時間は過ぎていく。

ジャクリーンとナターシャは以前のように僕を構わなくなった。

だがフランシスだけは以前と変わらず僕のもとを訪れる。

「ジン。久しぶりに妹が学校に来たからってシスコンが過ぎるんじゃなくて?あまりスピカだけに構っていないで私のことも構いなさい?」

フランシスは僕の前の席に腰掛けて僕らを見渡した。

スピカはフランシスを見ると明らかに愛想笑いを浮かべて適当に頷いていた。

「シスコンって…。スピカは病気明けなんだ。兄としては当然心配にもなるだろ?」

「兄様…優しい♡」

スピカは僕の腕にしがみつくと嬉しそうに微笑む。

「ちょっと!スピカ!離れなさいよ!あなた達、兄妹でしょ!?」

慌てたフランシスはスピカを咎めるような発言をする。

それに対してスピカは何でも無いように首を傾げると口を開く。

「兄妹だからいいんじゃないですか。何もやましいことなんてありませんよ?」

「ぐぬっ…」

フランシスはそれ以上何も言えずに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると最後に忠告のような事をしてその場を後にしようとする。

「ナターシャとジャクリーンの様子がおかしいの。ふたりともなにか知らない?例えば呪いとか…」

僕は覚えがなかったので首を左右に振る。

「私は知りませんね」

スピカも何も知らないようで普段どおりに口を開くと否定の言葉を口にする。

「そう。分かったわ。とにかく復帰おめでとう」

フランシスは握手を求めるとスピカもそれに応える。

二人は軽く握手を交わすと牽制し合うような視線を交わしていた。

「ふたりとも…どうしたんだ?」

現実世界ではなかった展開に僕は意味がわからずに目を白黒させているとフランシスが決定的な言葉を口にする。

「二人の呪いを解いてあげて。私に呪いは効かないわ。今、貴女がかけようとしたのも分かっている。早めに解かないと実力行使に移るけど?」

フランシスの言葉を耳にして僕は軽く呆れてしまう。

たしかに最初に呪いをかけたのはナターシャが先だったが…。

その仕返しをしていただなんて…。

「わかった。でもその代わり…兄様には近づかないで?私達の邪魔はしないで」

「誰も邪魔なんてしない。皆平等にジンにアプローチをかけているの。敵じゃなくてライバルなんだから。スピカもそれに従ってほしいな」

フランシスの言葉を耳にしたスピカは適当に頷くと仕方なく呪いを解呪したようだった。

正気に戻ったナターシャとジャクリーンは僕らのもとにやってくる。

「なんか変な感じだったな。呪われてた?」

ジャクリーンは何事もなかったかのように適当に微笑む。

ナターシャは気まずそうにスピカに謝罪をしていた。

「とにかく。皆平等にジンを取り合いましょう」

フランシスがまとめるような言葉を口にするとスピカは信じられないような言葉を口にする。

「兄様はジン・ジルクニスじゃないですよ?」

その意味深な発言にナターシャだけが訳知り顔な表情を浮かべており他の面子は訳がわからないような表情を浮かべている。

「何を言っているの…?」

フランシスの問いかけにナターシャは割り込むように口を挟む。

「きっと呪いの影響だよ…!後遺症かな…!?皆も気にしないで…!」

フランシスとジャクリーンはそれに頷くと午後の授業に向う。


帰宅するとナターシャは我が家にやって来る。

そして、スピカに向かい口を開く。

「スピカはなんでジンがジンじゃないって知っているの…?」

その発言にスピカは何でも無いように微笑むと適当に口を開く。

「私は兄様のことなら何でも知りたいし、なんでも知っていますから」

そう言って微笑むとスピカはカバンから一冊の本を取り出してナターシャに見せつける。

「それは…!」

ナターシャは明らかに動揺したような表情を浮かべる。

「私のは完全版です」

そう告げるとナターシャは焦ったような表情を浮かべて家を後にする。


スピカの部屋で二人に何が起きているのか分からなかったが僕は自室で着替えを済ませる。

そして、次の日からも何事もない日常が続くと思っていた。

だけど…。

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