第4話呪い合うのみ
普段どおりの学園生活を送る中でフランシスとの関係にも進展が見えてくる。
「ジンって最近、何処か雰囲気が変わったよね。昔より柔らかくなった?」
その様な発言に少しだけ眉を寄せると何とも言えない表情を浮かべる。
「そうかな?そんなに変わった?」
フランシスはそれに頷くと僕に近づいてきて目の奥を覗くようにじっくりと見据えた。
「う〜ん。見てもよくわからないけど」
「そうだろうね。僕は僕だから」
そんな風に視線から逃れるようなに適当な発言をする。
「今日って予定ある?よかったら家に遊びにこない?」
誘いの言葉に頷くわけにもいかずに断りの言葉を口にする。
「スピカの病気が完治したんだ。今は傍に居てあげたい」
「スピカちゃん治ったんだ。良かったね。じゃあ傍に居てあげたいよね。わかった。じゃあまた今度ね」
それに頷くとカバンを持って帰路に着く。
下校中にナターシャと鉢合わせるのだが彼女は何事もなかったように素通りする。
その直後にジャクリーンとも遭遇するのだが彼女も何事もなかったかのように先を急ぐ。
まるで僕に興味を失ってしまったかのようなその行動に僕の思考は少しだけ困惑状態だった。
帰宅するとスピカは僕を待っていて嬉しそうに挨拶を交わす。
「おかえりなさいませ!兄様!」
スピカは僕に抱きつくと微笑んで顔を覗き込んだ。
「あぁ。ただいま」
挨拶を交わすと僕は自室に戻る。
僕の後ろでスピカが独り言のようなことを口にしていたのだが、詳しく聞くことは出来ないのであった。
私の呪いが解かれた。
かけることは出来ても解くことは出来ない私は、自分の身に呪いをかけられていることに気付いていても何もすることは出来なかった。
それなのに…呪いが解けた。
呪いをかけられても他人にそれを言うことは出来ない。
呪いを解いてくれたのは、きっと兄だ。
では何故、兄は呪いに気付いたのだろうか。
信じられないことだが…もしかしたら兄は兄ではないのかもしれない。
もしもそうなのだとしたら…。
「兄様は私だけのものだからね。一生傍に居てね。愛してる」
兄の後ろ姿に小声で宣言のような言葉を口にするのだが、きっと聞こえては居ないだろう。
でも別に良いのだ。
今はまだ知られなくていい。
私の歪んだこの愛情も憧憬も何もかも知られなくていい。
人知れず兄ではない兄を私は愛し続ける。
いつか自分のものになることを信じて。
呪いを解かれて私は兄に関わろうとする女性に呪いをかけた。
だがかかっていない面倒な女性もいるようだ。
どうにかして兄を孤独に追いやり私だけのものにするのだ。
そのために今日も人知れず行動するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。