第84話 お試し挑戦(2)
「どう?周囲の様子はちゃんと見える?」
第1階層へと続く階段を下りきったところで、美冬ちゃんに確認する。
挑戦を繰り返すうちに慣れてしまったので俺はこのうっすらとした明かりの中でも普通に行動できるが、美冬ちゃんもそうだとは限らないからな。
「大丈夫です。これくらいの暗さであれば他のダンジョンで経験したことがあります」
「そうか。じゃあ、特に気にせずいつもどおりに進むことにするよ。もし、無理そうなら言ってくれ」
「わかりました」
そんな会話を交わし、ダンジョンを進みだした。
「うん?グリーンスライムがいるな」
通路を進み、手前の大部屋へと通じる曲がり角を曲がったところで足を止める。すると、少し後ろを歩いていた美冬ちゃんが追いついて、声をかけてきた。
「どうしました?……って、スライムですか」
「うん、スライムがいたんだけど、美冬ちゃんが倒してみる?一応、向かっている大部屋にはたくさんいるはずだけど」
「いえ、スライムは初めてなので、試しに倒させてください」
そう言う彼女にスライムを任せることにし、横にずれて道を譲る。
それを受けて、美冬ちゃんは長剣を構えてスライムへと近づいていった。
「……」
まあ、予想できたことではあるが、戦闘は一瞬で終わった。
ダンジョンに入る前に確認した彼女のレベルは14。気付けば俺のほうがレベルが上になっていたようだが、それでも俺より1つ下でしかない。
であれば、グリーンスライムの一匹程度、一撃で難なくしとめてしまえるだろう。
「地面近くにいて攻撃しにくい以外は問題なさそうですね」
「まあ、このダンジョンで最弱のモンスターだからね」
歩み寄る俺に気付いた美冬ちゃんの感想にそう返し、改めて大部屋へと向かいだした。
「多いですね」
大部屋の前へと到着し、部屋の中を確認した美冬ちゃんがつぶやく。
「まあ、所詮はスライムだけどね。ダンジョン産の防具も装備しているし、気をつけるのはレッドスライムの魔法だけでいいと思うよ」
「レッドスライムもいるんですね」
そこまでは確認できていなかったのか、そんな呟きが返ってくる。
まあ、部屋の中は結構な広さがあるし、奥にいたのであれば見逃すこともあるかもしれない。
「それで、どうする?ストレスを発散したいって言っていたし、美冬ちゃんが全部を相手してみる?それとも、2人で連携を試しながら相手してみる?」
「……そうですね、できれば一度私だけでやらせてもらえませんか?連携を試すにしても、一度私の戦い方をしっかりと見てもらったほうがいいと思いますし」
まあ、それもそうか。一応、さっきの通路でもグリーンスライムとの戦闘を見たけど、あれだけじゃ正直判断できないしな。
「一応、問題がなければ第2階層にも行ってみるつもりだけど、どうする?そっちは、小部屋でコボルトとインプを相手にすることになる形だけど」
「……いえ、この部屋を私に担当させてください。第2階層については達樹さんの戦い方を確認させてもらうことにします」
少しの逡巡の後、そんな答えが返ってくる。
今日の探索については、美冬ちゃんの希望を優先するつもりだったので特に反論ははない。
「じゃあ、とりあえずはそういう方針でいこう。ちなみに、俺は“投擲”のスキルも持っているけど、それを使った援護はどうする?」
「いえ、最初は援護なしでやらせてください」
「そう?魔法の妨害も必要ない?」
「はい。魔法に対する対応も確認しておきたいですから」
「わかったよ。じゃあ、本当に危なくなるまでは手を出さないことにするよ。まあ、無防備な状態で魔法を立て続けに食らわない限り、そんなことにはならないだろうけど」
そう言って、戦闘前の確認を終える。
一呼吸置いて、準備を終えた美冬ちゃんが大部屋の扉を押し開き部屋の中へと入っていく。
それに続くように、やや遅れて俺も大部屋へと足を踏み入れた。
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