第82話 迷宮エリア
迷宮エリアに足を踏み入れてから随分と経った。あいにく、未だに迷宮エリアから抜け出せそうな気配はない。
ただ、モンスターには何度か遭遇した。残念なことにゾンビとスケルトンだったが。
……。
こいつらを相手にしたくないから第3階層でのレベル上げを諦めたというのに、進んだ先でも相手にすることになるとか運が悪すぎるだろ。
「分かれ道か」
今日何度目かもわからない分かれ道に行き当たった。T字路で左右に通路が続く形の分かれ道だ。
左右を見てモンスターがいないことを確認し、通路の中心に立つ。
「右かな」
しばらくの間、目を閉じて集中してから結論を出す。左の通路に違和感を感じたからだ。
迷宮エリア内でレベルの低い罠探知がどこまで信用できるかは分からないが、他に指標となるものもないので今日は罠探知の感覚を信じることにしている。
まあ、小部屋の迷宮エリアであれば最短で1時間程度で抜けることができるらしいので、結果はお察しというところなのだろうが。
「まあ、日を跨がなければマッピングも有効らしいし、もう少しだけ探索してみるか」
欲をいえば迷宮エリアの先を見たいという思いもあるが、さすがに初日でそれは厳しいだろう。今日のところは、お試しだと割り切るべきだ。
そんなことを考えつつ、分かれ道を右へと進むことにした。
「……」
レベルの低い罠探知の効果なんてお察しだろと思っていたが、案外バカにしたものでもないかもしれない。
罠探知の感覚を頼りに進んだ結果、扉の前へとたどり着いたのだから。
「まあ、これが先に続く正解の扉かもまだわからないしな」
しばらく呆けてしまったが、気を取り直してつぶやく。
迷宮エリアと呼ばれてはいるが、別に入り口と出口しか存在しないわけではない。行き止まりの通路や小部屋へと繋がっていることもあるし、悪質な場合はモンスターハウスに繋がっている場合もある。
そんなことを考え、ゆっくりと扉を開く。
目の前には見慣れた岩肌の通路がまっすぐに延びていた。
「まさか、正解を引いたのか?」
期待感から思わずつぶやいてしまう。
もし、コレが本当に正解の通路なのであれば、罠探知のスキルを見直す必要があるかもしれない。
「まあ、進めばわかるか」
正直、時間的にはそろそろ引き返すべき時間だと思うのだが、さすがにここで引き返すわけにもいかない。
覚悟を決めてゆっくりと通路へと足を踏み出した。
「いやまあ、そんなに甘くないよな」
数分後、俺は通路の先の行き止まりに立っていた。
そこまで長い通路ではなかったし、モンスターも出なければ罠もなかったので、何事もなくあっさりとたどり着いたのだが、結果はただの行き止まり。
罠探知のレベルが低いことを考えれば、一発で正解を引けなくても不思議ではないはずなのに、期待してしまったせいか思ったよりも落胆が大きい。
「……そういえば、この通路に対しては特に違和感を感じなかったな。スキル的には出口以外に通じる扉は罠扱いではないという判定なのか」
ふと気付いたことを口に出す。
だからどうしたという話ではあるのだが、とりあえず、行き止まりの通路の場合は実際に確認してみるしかないことがわかった。
「今日はもう帰るか。日を跨いでマッピングしたものを無駄にするのもバカらしいしな」
さすがにまだそこまで切羽詰った時間ではないが、のんびりと探索を続けるほどの余裕があるわけでもない。
ここは素直に探索を切り上げることにしよう。
「……疲れた」
珍しく、家に帰り着いた頃には既に夜になっていた。
あの後、迷宮エリアに関してはマッピングしていたこともあり、すんなりと抜けることができた。
だが、第1階層でメンドーなことに、リポップしたストーンゴーレムにかち合ってしまったのだ。
いやまあ、レベルアップして装備も整えた今であれば、かつては強敵だったストーンゴーレムといえど大した敵ではない。
ただ、第1階層まで戻ったことで気を抜いてしまったので、思った以上に手こずってしまった。
「というか、これ以上の攻略を目指すのであればコレが普通になるんだよな」
今までは、運よく自衛隊の巡回チームが倒したモンスターのリポップにかち合うことは無かったが、今後探索時間が延びるようになれば、帰路でそういう相手とかち合うことも増えるだろう。
いっそ、日を跨いで次の日の巡回後に帰ることにすれば、そういうことを回避できるかもしれないが。
「まあ、さすがに無理してダンジョン内で夜を越すほどではないんだよな」
ただ、余裕を持って倒せるようになったからといって、ストーンゴーレムもトロールも油断できる相手ではない。今後は、ダンジョンから帰るときにもHPをしっかりと確認しておくべきだろう。
もしもHPが少なくなっているのであれば、休息をとるなどして回復してから帰ることを考える必要がありそうだ。
結局、翌日からは素直に第3階層でレベル上げをすることになった。
第4階層へ進むことにした理由の1つが第3階層のゾンビに対する苦手意識だったのに、第4階層でもゾンビが出るのであれば無理に先に進むこともないだろうという判断だ。
それに、やはりソロで迷宮エリアを探索するのが疲れるというのもある。
周囲を警戒しながら自身でマッピングしなければいけないし、少なくとも毎日挑戦したいとは思えなかった。
「とりあえず、レベルが上がるまでは保留かな。一応、気分転換としてたまに挑戦するくらいならアリかもしれんが」
幸いなことに、精神的な疲れはともかく第4階層であってもモンスターの強さが問題になることはなかった。
なので、第3階層でのレベル上げに飽きたときに、週に1回くらいの頻度で第4階層に挑戦するくらいのことは出来なくはないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます