第73話 トロール戦(2)
「ひとまず、どうにかなったか」
結論から言うと、俺のとった戦法はバッチリとはまった。トロールが明らかにコボルトやインプと連携を取れていなかったので、第2階層の小部屋と同じようなやり方であっさりと片付いたのだ。
途中でコボルトが飛んできたりということはあったが、違いはその程度だ。トロールとの距離に気を付けてさえいれば、それほどの脅威にはならなかった。
ただ、問題はここからだ。
お付きのコボルトとインプはあらかた片付けることができたが、すべてを倒し切ったわけではない。まだ、コボルトが3匹とインプが1匹残っている。
ちなみに、気づいたら部屋の奥にいたコボルトたちも合流していたので、文字通り最後の数匹である。
さすがにこれ以上、トロールと距離をとりつつ安全に削っていくのは難しいだろう。
まあ、時間をかけて慎重にやればできるのかもしれないが、どれだけかかるか分かったものではないので却下だ。それに、自分の実力を把握するためにもある程度はまともにやりあっておく必要もあるだろうし。
「さて、気合を入れなおさないとな」
少し距離のある場所からゆっくりとこっちに向かってくるトロールたちを見つめる。
というか、周りにいたコボルトとインプがほとんど倒されたのに随分と余裕があるように見えるな。トロール的にはコボルトとインプは戦力として認識していないのだろうか?
まあいい、基本はさっきまでと同じで残ったコボルトとインプの排除だ。トロールにも近づかざるを得なくなるので、隙があれば攻撃を加えるつもりではあるが、あまり期待はできないだろう。
どうにかして、トロールの攻撃をかいくぐりながら削っていくしかない。
そう決意して向かってくるトロールたちへと駆け出した。
「ふう」
トロールの周囲にいたコボルトとインプを倒し切り、距離を取って一息つく。
さすがにトロールの攻撃をかいくぐりながら攻撃を加えるのは神経を使った。だが、これで残ったのはトロール2体だけ。
ようやく、本来の目的であるトロールを相手にすることができる状況になった。
相変わらず、走ることなくゆっくりと距離を詰めてくるトロールを視界に収めながらステータスのHPを確認する。
「HPは問題なさそうか」
さすがにダメージなしとはいかないが、お供のコボルトたちを倒すまでに食らったダメージはおおよそ1割といったところ。ダメージ量的には気にする必要はない。
ただ、コボルトとインプからはカスダメージしか食らわないので、そのことを考えると攻撃自体は結構な数をもらっているのかもしれない。多数を相手にする以上、ある程度は仕方ないのかもしれないが、今後この大部屋を中心にレベル上げをすることを考えるとそのあたりは課題になってくるだろう。
まあ、まずは目の前のトロールたちを倒さないことには課題も何もないのだが。
徐々に距離を詰めるトロールたちの攻撃範囲に入る少し手前、10メートルほどの距離になったところで右側のトロールに向かって駆け出す。
トロールが反応して丸太を振るってくるが、左手に装備したラウンドシールドでそれを受け流す。
「くっ、重い」
正面から打ち合うことを想定して装備をメイスと盾の組み合わせに変更していたが、予想通りトロールの攻撃はかなりの威力だ。
だが、威力があるとはいえ、ストーンゴーレムの攻撃と同等程度だろう。そうであれば、どうにかすることは可能だ。
受け流すために止めた足を動かし、もう一体のトロールに対して死角になるよう右側へと回り込むようにしてトロールの懐へ潜り込む。
そこにトロールが丸太を持っていない左手で拳と作り攻撃を加えてきた。
それを左手の盾で殴り返すようにして受け止める。
さすがにはじき返すことはできなかったが、攻撃を止めることはできた。そのまま、右手のメイスでトロールの脇腹を殴りつける。
「!?」
まともに攻撃が入ったはずだが、トロールはそれを気にすることなく今度は足を使って蹴りを放ってきた。
それをバックステップでかわし、そのまま後ろに下がって距離を取る。
分かってはいたが、やはりトロールは相当にタフなようだ。
しかも、事前に調べた情報が確かであれば“HP自動回復”のスキルもあるそうだから、その厄介さはかなりのものだろう。
一応、コボルトたちを削る際に何度かダメージを入れているはずだが、恐らくそれらのダメージは回復しているはずだ。
「まあ、嘆いたところで現状が変わるわけでもないし、動いていくしかないんだけどな」
あいにくと遠距離からの投擲が効かないことは確認済みなので、メイスで直接ダメージを与えていくしかない。
おそらく、硬球や砲丸であればダメージは入るのだろうが、普通に手に持った丸太で弾かれてダメだった。小石については、複数をまとめて投げると当てることができるが、ダメージが通っている様子がなかった。
なので、やはり地道に足を動かして削っていくしかないのだ。まあ、いつも通りといえばいつも通りなので気にしてもしょうがないだろう。
攻撃手段を増やすための“投擲”スキルだったはずではあるが、効かないものはしょうがない。
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