第62話 第2階層初挑戦の反省(3)

 不測の事態を立ち回りでどうにかできないのであれば、ひとまずは装備を更新して対策することになるのだろうか?

 一応、費用に目をつぶれば、すぐに対策出来ないこともないだろうし。


 ただ、その装備の更新についても、身の丈に合わないものを用意してしまうと今度は自身の成長が妨げられるという問題がある。

 ダンジョンを攻略する最後まで装備の性能でごり押しできるというのであればそれでもいいのだろうが、さすがにそこまで甘いものではないはずだ。


「となると……、手数を増やしてみるか?」


 間違いなく“投擲”スキルを身に着けたことで戦いの幅は広がった。それを考えると新たに別の手段を身に着けるのもありかもしれない。

 理想としては魔法スキルなんだが、これは無理だろう。というよりも新しくスキルを身に着けるというのはどうなんだろうかという感じだ。


 さっきスキルを成長させようと考えたばかりなのに、新たにスキルを増やしてスキルの成長速度を遅くするのは違う気がする。もちろん、魔法スキルくらいのインパクトがあるものであればアリだとは思うが。

 そう考えると増やすのは武器だろうか。


 両手にメイス、あるいはメイスと盾。

 一般的なのはメイスと盾な気がする。盾で相手の攻撃を防ぎつつメイスで攻撃するという王道なスタイルだ。

 難があるとすれば機動力が落ちそうなところだろうか。盾の大きさ次第だが、身を隠せるほどの大きさになると、まともな機動力は期待できないだろう。

 だったら腕に装着できるような盾かというと、そちらもどうなんだろうか。そのサイズであれば両手にメイスでも良さそうな気がする。そちらであれば“メイス”スキルの補正効果も期待できるだろうし。


 というか、どちらかに絞る必要もないのか?

 両方の手段を用意して、その場の状況に応じて適した方を選ぶ。あるいは、両方試してみて自分に合う方を選ぶというのが良い気がする。


 ……いや、予算の問題があるか。

 盾を用意するのであればダンジョン産のものを用意すべきだろうし、そうなるとそれなりの値段になるだろう。メイスについても同様だ。

 ただ、メイスについてはいざというときの予備として、これに関係なく用意しておくのもありかもしれない。一応、メイスを失った場合には“投擲”スキルでどうにかしようと考えてはいたが、主武器であるメイスの予備があるに越したことはないだろうし。


 でも、予備として用意すると荷物になるのが問題なんだよな。

 今使っているメイスもそれなりの大きさになる。少なくともリュックの中に入るような大きさではないし、リュックに括り付けるにしても動きの妨げになりそうだ。

 伸縮式の特殊警棒みたいなメイスがあれば一番いいんだが。


 ……そういえば、“メイス”スキルの補正効果はどこまで適用されるのだろうか。メイスだけでなく、こん棒みたいな打撃武器にも補正がかかるという情報をネットで見た気がする。

 これが特殊警棒にも有効なのであれば、いざというときの予備にちょうど良いかもしれない。これであればリュックに2、3本入れておくこともできるだろう。


 ネットで調べてみて情報がなければ実験だろうか。まあ、補正がなくとも固いモンスター以外であれば、まったく使えないということもないだろう。


「ひとまずは特殊警棒で二刀流を試してみる、か?」


 特殊警棒の値段は知らないが、さすがにダンジョン産のメイスよりも高いということはないだろう。性能的にはダンジョン産のメイスや盾の方が確実なんだろうが。


「でもなあ、金を惜しんで自分の身を危険にさらすのもなあ」


 ダンジョン産のメイスや盾は安くない。安くないが、手が出ないという値段でもない。まあ、今の俺が地味に成金みたいな状態になっているからこそ言えることだが。

 だからといって、前に考えたようにダンジョン挑戦のために無駄遣いしたくないという考えが変わるというわけでもない。


「まあいい、これも探索者支援が始まってから考えよう」


 探索者支援にはダンジョン産装備の無料貸与というものが含まれていたはずだ。それを利用できれば、わざわざ自分で買って試さなくても装備を借りて実験することができるかもしれない。

 とりあえず、これについては佐藤さんに相談してみよう。



「結局、根本的な対策が取れそうなのは探索者支援が開始されてからか……」


 色々と考えてみたが、結論としてはそういうことになりそうだ。

 とりあえず、稽古を増やす、特殊警棒を試してみる、“投擲”スキル用のダンジョン産アイテムを用意する、という今できることをやりつつ、スキルや自身の成長をさせていくしかないだろう。

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