第36話 考察と反省と相談と(2)
午前中の用事を片づけて昼食をとり終えた後、居間で座り込み腕を組んで昨日の戦闘で何が悪かったのかを考えていた。
先ず、1番ダメなのはスライムがどうにかなったからといって金属バットを過信してしまったことだろう。目の前に置かれた折れ曲がった金属バットがそれを物語っている。
そもそも、ダンジョン産の装備やスキルスクロールに高い値が付いているのは、現代の武器や防具がダンジョン内のモンスターに通用しなかったからだ。
スライムやゴブリンなどの下位のモンスターには銃やナイフなどの武器も通用するが、トロールやワイバーンなどの上位のモンスターには通用しない。ダンジョンについて調べればすぐに出てくる情報だし、探索者講習でも聞いた話だ。
それなのに、ストーンゴーレムに挑戦するにあたって現状の装備を軽くチェックするだけで済ませてしまった。はっきり言ってなめているとしか言いようがない。自分では気づいていなかったが調子に乗って油断していたのだろう。
ストーンゴーレムについては挑戦前に調査して防御が固いことは確認していた。さらに詳しく調べていれば金属バットでどうにかできる相手かどうかも分かっていたはずだ。
原因は油断と準備不足だろうか。
次にダメだったのが、バットが折れ曲がったからといって敵の目の前で固まってしまったことだ。
このせいでストーンゴーレムの攻撃をまともに食らい、レッドスライムの火の矢を食らい続けることになってしまった。
武器や防具の破損など、ダンジョンへ挑戦していれば普通に起きることだ。この程度のアクシデントは想定しておいてしかるべきだろう。そういう意味では想定が甘く、戦闘をなめていたのだろうか。
だが、戦闘中のアクシデントに対する対応についてはある程度の経験も必要だろう。これについては次の稽古の日に龍厳さんに聞いてみるか。さすがに話を聞いただけで対処できるようになるとは思わないが、聞いたことがないよりはましになるだろう。
しかし、今日は月曜日か。次の稽古まで1週間近くあるな。
……稽古とは関係なく先に相談だけでもしておくか。
それ以外にダメだったところは、昨日も考えたが選択肢のなさだろうか。現状、金属バットによる近接攻撃しか選択できる行動がない。まあ、ブーツを履いているのでスライム程度であれば蹴りも有りかもしれないが、ストーンゴーレム以上になると通用する気がしない。それに、蹴りを選択肢に入れたとしても近接攻撃であることには変わりない。
やはり牽制レベルでもいいから遠距離からの攻撃手段が欲しい。遠距離からの攻撃手段があれば、ストーンゴーレムの攻撃範囲外からレッドスライムへ攻撃して先に排除することができたはずだ。仮に牽制だけであったとしてもストーンゴーレムと分断ができていたかもしれない。
とりあえずはダンジョン管理機構のアイテムショップへ行ってスキルスクロールの調達だろうか。
まあ、選択肢のなさに関しては別案としてパーティーを組むというものもあるのだが、残念ながらパーティーメンバーの当てがない。
唯一候補に挙げられるのが美冬ちゃんなんだが、彼女の武器は刀だ。遠距離攻撃が欲しいところに近接武器のメンバーを加えても人数が増えるメリットだけで今後のことも考えると効果は微妙だろう。
それに、美冬ちゃんは俺と違って会社勤めだ。活動時間が違うのでそもそもパーティーを組むのは無理だろう。
後は佐藤さんに相談してダンジョン管理機構からパーティーメンバーを紹介してもらうというものか。
だが、人間関係に疲れて会社を辞めた俺としては、初対面の人間とパーティーを組むのは考えたくない。これは本当にどうしようもなくなった時の最終手段だな。
他にも疲れるからと、グリーンスライムとブルースライムを削りきる前にストーンゴーレムに突っ込んだのも問題か。あれも油断なんだろうな。
……とりあえずの反省点はこんなものか。
ひとまずの思考を終え、テーブルに置いた湯飲みに口を付ける。
結論としては、油断を含めて戦闘に対する心構えがなっていないということと、装備含め準備ができていなかったことか。
となると、今日の予定としては龍厳さんに相談に行くかアイテムショップへ向かうかとなるのか。とりあえずは龍厳さんの予定の確認だな。
そう結論を出し、ひとまず龍厳さんへ電話をかけることにした。
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