第29話 力試し(1)
自衛隊の隊員による巡回が始まってからも、スライムたちを相手にひたすらレベル上げに励んでいる。手前の大部屋は巡回ルートから外れているらしいので、その大部屋にいるスライムたちが相手だ。
巡回開始から4日目に佐藤さんが新しい巡回チームと一緒にあいさつにやって来たので、その際にどういうルートで巡回しているのかを確認してみた。
それによると、第1階層、第2階層の正規ルートを通って第3階層への階段の手前まで巡回しているとのことだった。
正規ルートというのは次の階層への最短ルートのことらしい。なので第1階層の手前の大部屋や第2階層にもあるという横道にそれた小部屋のモンスターの排除はしていないそうだ。
必要であれば正規ルートのモンスターも残すことが可能だと言われたが遠慮しておいた。
しばらくはレベル上げが必要だろうと考えていたし、手前の大部屋にいるスライムたちでまだ十分だったからだ。レベルが上がって十分に準備ができたと思えるようになってから第1階層奥の大部屋のモンスターを残してもらうつもりだ。
そして、今日も今日とてダンジョンを歩いている。
世間ではゴールデンウィークが終わり、憂鬱な週明けが訪れているようだが、世間の流れから外れた俺にはあまり関係がない。ゴールデンウィーク中も休みとは関係なくダンジョンでスライムたちと戯れていた。
その結果、ゴールデンウィーク中にレベルが3つ上がっている。現在の俺のステータスはこんな感じだ。
名前:森山 達樹(モリヤマ タツキ)
種族:ヒト
性別:男性
年齢:34
Lv.:7
HP:160
MP:154
STR:13
VIT:12
INT:12
MND:11
AGI:10
DEX:13
LUK:13
称号:探索者
スキル:ダンジョン適応、罠探知 Lv.1
レベルアップの成果として、いつものSTRとVIT以外にもMND、AGI、DEXが1ずつ成長している。
初めてステータスを確認したときには後衛寄りのステータスだと思っていたのだが、今ではSTRとVITが成長して前衛寄りのステータスになってしまった。まあ、スライム相手に金属バットで殴りかかっているだけなのだから当然と言えば当然なんだが。
で、今日はこの成長したステータスをもって大部屋に挑戦しようとしている。いつもとは違い、通路への釣り出しをせずに大部屋にいるすべてのスライムたちを相手にしようという挑戦だ。
HPとMNDが上がったことにより、レッドスライムの魔法にもある程度余裕が生まれてきているし、ダンジョン内限定だが龍厳さんに教わっている身のこなしができ始めている。
このあたりで一度どの程度戦えるのかを試してみたいのだ。もちろん、最近の戦いで十分に勝算があると判断したからこそなのだが。
「ふう」
大部屋の扉の前に着き、ひとつ息を吐いて扉に手を当てる。
なんだか久しぶりに緊張している気がする。思えばここ最近は余裕が出てきたために漫然とスライムたちと戦っていたのだろう。
腕に力を込めて扉を開ける。
そのまま音もなく開いていく扉を抜け、大部屋にいる大量のスライムたちに向かって歩き出した。
大部屋に入り部屋の中を見渡す。ざっと見たところ、部屋の中には20匹を超えるスライムたちがいた。レッドスライムの数はいつも通り2匹のようだ。
とりあえず予定外のモンスターはいないようなので、近くにいた2匹のグリーンスライムに向かって駆け出す。
「はっ」
気合とともにバットを叩き込む。
駆け寄る俺に気付いて避けようとしたようだが、反応が遅い。勢いの乗ったバットは右にいたグリーンスライムに直撃している。左のグリーンスライムが反撃しようと動き出すが、こちらに攻撃してくる前に蹴りを叩き込む。
蹴り飛ばしたグリーンスライムが転がっていく。
その間にバットを叩き込んだグリーンスライムに追撃を加えてとどめを刺した。
とどめを刺し終えて部屋の中を見ると、スライムたちがこちらに注目していた。
それを確認し、再び近くにいるスライムたちに向かって駆け出す。
今度は動きを止めず、すれ違いざまにバットを叩き込む。スライムたちもこちらに体当たりを仕掛けてくるが左腕でガードして耐える。
「っ」
スライムたちの集団に対して3往復してグリーンスライム1匹にとどめを刺したタイミングで奥にいたレッドスライムが火の矢を放ってきた。
立ち止まって火の矢に対して正面に構える。周りのブルースライムとグリーンスライムに対して無防備になるが火の矢を食らうよりはましだ。
「ふんっ」
スライムたちからの体当たりを受けつつ、気合とともにバットを振りおろして火の矢を相殺する。衝撃に耐え、そのままバットを振り回して周囲のスライムに攻撃を加える。
ちょうど飛びかかって来ていたブルースライムを吹っ飛ばした。
一瞬の間が生まれる。
その間を利用してスライムたちと距離をとり、HPを確認する。
大丈夫、まだHPは10も削られていない。
そのことに安心し、再びスライムたちに対してヒットアンドアウェイの攻撃を加えはじめた。
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