第25話 小部屋の先へ(1)

 レッドスライム討伐を果たした翌日、再び小部屋へ挑むことにした。理由はレベル上げとインターネットで調べた情報の確認のためだ。


 調べたのはレッドスライムが使用する火魔法について。

 インターネットの情報によれば、あの火の矢は火魔法Lv.1の魔法呪文で“ファイアアロー”というらしい。その消費MPは5。そして、第1階層のレッドスライムのMP量は個体差はあるらしいがおおよそ20らしい。

 昨日のレッドスライムは火の矢を4回放って以降、魔法を使わなくなった。インターネットの情報を信じれば、昨日のレッドスライムはMP切れを起こしていたということだ。


 今日はレッドスライムに火の矢を4発撃たせることを狙っていく。そして4発目以降の火の矢が飛んでこないことを確認するのだ。

 実際に火の矢4発でMP切れを起こすことが確認できれば、今後の攻略がしやすくなる。火の矢を4発耐えれば、後にはただのタフなスライムが残るということになるからだ。



 小部屋の攻略は順調に進んだ。

 今回は火の矢を撃たせる回数を増やすために通路への釣り出しを3回に増やしたんだが、レッドスライムの奴は期待通り、3回すべてで火の矢を使ってくれた。結果、小部屋の中に残るのは火の矢を1回残したレッドスライム1匹とグリーンスライム2匹だ。

 このまま一気にけりをつけてしまおう。


 小部屋の中に入るとスライムたちは部屋の中央にまとまっていた。前方にグリーンスライム2匹、後方にレッドスライムといういつもの陣形だ。

 特に気負うことなくスライムたちへと近づく。

 するとレッドスライムが詠唱を始めた。

 最後の1発を余裕のある状況で使ってくれることに感謝しつつ、バットを構えて火の矢に備える。


 数秒後、飛んできた火の矢をバットで迎撃し、同時に飛びかかって来ていたグリーンスライムたちを腕でガードする。

 バックステップで一度距離を取り、スライムたちの様子を確認する。

 レッドスライムは未だ後方に位置し、グリーンスライムが突出している形になっているようだ。

 であれば、速攻でグリーンスライムたちを片づけるべきだろう。

 そう決めて目の前に転がる2匹のグリーンスライムたちに殴り掛かった。


 レッドスライムがこちらに攻撃を仕掛けてきたのはグリーンスライム1匹にとどめを刺し終えたタイミングだった。

 動かなくなったグリーンスライムを叩きつけているという余裕のある状態であったため、レッドスライムの行動は全て見えていた。

 なので、レッドスライムが目の前に来たタイミングでバットを構え、フルスイングを放った。

 真芯で捉えた今のバッティングは我ながら会心の一打だったと思う。

 だが、壁にぶつかったというのにレッドスライムはまだ息があるようだ。

 そのことを面倒に感じつつ、目の前のグリーンスライムにとどめを刺す。そして残ったレッドスライムにとどめを刺しに向かった。



「今回はドロップなしか」


 レッドスライムにとどめを刺した後、残念に思いながらつぶやく。

 まあ、いくら上位種といっても所詮はスライムだ。都合よく毎回ドロップアイテムを残すわけではないだろう。

 それに今回の目的はレッドスライムの火の矢の最大数の確認だったのだ。今日も4発で打ち止めとなっていたのでおそらくインターネットで調べた情報は正しいのだろう。

 今日のところはそのことが確認できただけで満足すべきだ。




「じゃあ、奥に進んでみるか」


 気を取り直してつぶやく。

 この小部屋が第1階層の最深部というわけではないので、当然、先へと続く道がある。そしてその先に進む道、というか扉はすでに見つけている。

 まあ、見つけるもなにも部屋の右手の壁面に入って来たのと同じような巨大な扉が設置されているので部屋に入るとイヤでも目に入るのだが。

 昨日はレッドスライム初討伐ということに加え、HPにもダメージが溜まっていたのでそのまま帰還した。だが、今日はHPもほぼ満タンの状態だ。ここは先の通路の確認に行くべきだろう。


 先に続く扉の前までやってくると、立ち止まって深呼吸をする。

 どうもこういう先に何があるかわからないようなものには無駄に緊張してしまう。

 気を取り直し、左手で扉に触れる。

 徐々に力を加え、わずかに開いた隙間から奥を覗き込む。


 どうやら扉の向こうはここのような部屋ではなく、今まであったような通路になっているようだ。

 さらに慎重に周囲を見渡してモンスターがいないことを確認し、扉を開けて先の通路へと足を踏み出した。

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