第15話 対複数戦闘訓練と対策(1)

 次の日、俺はいつも通りダンジョンへ入り通路を歩いていた。昨日はダンジョン産の防具の効果を確認したが、今日は対複数の戦闘を確認してみるつもりだ。

 しかし、わかってはいたが通路にはモンスターがほとんどいない。ダンジョンに入ってからすでに30分ほど経つが未だに遭遇なしだ。

 正直、昨日確認した防具の効果を考えれば部屋に入ってみても大丈夫な気もするが、一応1度は確認しておこうと思って探し回っている。


 ダンジョンに入ってから1時間半近く経過した。今はブルースライムを引き連れて通路を歩いているところだ。

 このブルースライムに遭遇する前にもグリーンスライム2匹と遭遇し、すでに十字路のところに誘導し終わっている。なので、このブルースライムを十字路まで連れて行けば今日の目的である対複数戦闘に移れるというわけだ。

 しかし、通路で遭遇するスライムを集めるのは思っていた以上にメンドくさい。戦闘訓練が目的なので余計なダメージを与えるわけにはいかないし、かといってこちらが無駄に攻撃を食らうのも面白くない。つかず離れず、絶妙な距離を保ちながら移動する必要がある。

 だが、この苦労も後もう少しだ。グリーンスライムを誘導しておいた十字路が見えてきた。


 ブルースライムを引き連れたまま十字路に到着し、左右の通路を確認する。良かった、先に誘導していたグリーンスライムは移動せずにちゃんととどまっていたようだ。

 それを確認し、バットで地面を叩く。

 ガンッという音に反応し、左右の通路にいたグリーンスライムたちがこちらの存在に気づいた。どうやら準備は出来たようだ。


 十字路の交差点からすぐさま移動し、後ろを振り向いてバットを正面に構える。

 数秒後、向かいの通路からブルースライムが、左右の通路からはグリーンスライムが飛び跳ねながら顔を出す。

 3匹のスライムを視界に入れ、バットを強く握りなおした。


「ふぅ」


 1つ息をついて、一番近くにいた左のグリーンスライムに突きを繰り出す。

 狙いを付けたスライムを正面にとらえつつ、残りの2匹も視界に入るように意識する。


 狙ったグリーンスライムはこちらの攻撃に合わせて体当たりをしてきた。

 ブルースライムもこちらの攻撃に合わせて飛び込んでくるのが見える。

 右のグリーンスライムはまだその場でポンポンと跳ねているだけだ。


 グリーンスライムへの突きを緩め、グリーンスライムの体当たりを弾くようにバットを動かす。

 グリーンスライムを弾くと、そのままバットを回転させて右から飛び込んでくるブルースライムにバットを合わせる。


「ふんっ」


 ブルースライムにバットが当たったタイミングで力を込めて振りぬく。

 ブルースライムはそのまま通路の先へ飛んでいった。

 それを見送り、先ほど弾いたグリーンスライムへ追撃を仕掛ける。

 しかし、身体の向きを変えたタイミングで右のグリーンスライムが動き出したのが視界の隅に見える。


「チッ」


 右腕でグリーンスライムからの攻撃をガードするようにして後ろへと下がる。

 軽い衝撃を感じて、うまくガードできたことを認識する。

 しかし、その隙に左のスライムが体勢を立て直してしまった。


 視線を前にやると2匹のグリーンスライムがポンポンと跳ねてこちらを窺っている。ブルースライムはまだ転がったままだ。

 ブルースライムが復帰する前にどちらかを倒しておくべきだろう。

 そう考えると、一歩踏み出して右から横なぎにバットを振った。


 右のグリーンスライムには後ろに転がられてバットを避けられた。

 しかし、左のグリーンスライムにはまともにバットが入り、そのまま壁まで吹っ飛んで地面に転がる。

 右のグリーンスライムがまだ体勢を立て直していないのを見て、追撃に移る。


 地面に転がるグリーンスライムに対して上からバットを叩き込む。

 4発バットを入れたところでグリーンスライムは光となって消えた。

 それを確認して視線を前に戻す。


 目の前にブルースライムが迫っていた。


「くそっ」


 慌ててバットを持ちあげようとする。

 しかし、目の前まで迫ったタイミングでは間に合うはずもなく顔面でブルースライムの体当たりを受けてしまう。


「ぐうっ」


 顔に受けた衝撃にのけぞりながら呻きをあげて後ずさる。

 痛みをこらえて目を開けるとさらに追撃しようとするブルースライムの姿がある。

 すぐにバットを正面に構えなおして攻撃に備えた。


 ブルースライムが飛び掛かってくる。

 バットを合わせて攻撃を受け止め、そのまま地面に落ちたブルースライムへバットを叩き込む。

 しかし、ブルースライムは横に転がり、バットは地面を叩いた。


 バットを正面に構えなおしてブルースライムと対峙する。

 残念ながら今のやり取りの間にグリーンスライムが体勢を立て直したようだ。視界の隅で跳ねているのが見える。

 グリーンスライムを視界に入れたまま、ブルースライムへ突きを繰り出す。


 ブルースライムは後ろに転がって避けようとする。グリーンスライムは動かないままだ。

 さらに一歩踏み込み、バットを振り上げてそのまま叩き込む。

 今度は横に転がって避けようとするブルースライムに対してバットの軌道を変えて対応する。

 バットがブルースライムを捉え、ダメージを与えた感触が伝わってきた。

 同時にグリーンスライムが飛び込んでくるのが見える。

 だが、グリーンスライムの動きを視界に収めていたので、焦ることなく身体を後ろにそらして避ける。

 俺の前を通過したグリーンスライムが通路の先に落ちたことを確認し、ブルースライムへ追撃を加える。

 動かないブルースライムに3発叩き込んだところで、またグリーンスライムが飛び込んでくるのが見えた。


 今度は避けずにバットを構え、そのままグリーンスライムを打ち抜く。

 真芯で捕えたグリーンスライムは通路の壁にぶつかり、ベチャッという音とともに弾け、光となって消えた。

 それを確認すると、視線をブルースライムに戻してひたすらにバットを叩き込んで光へと変えた。

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